
山の紅葉が美しい時季、友人からお誘いがあり、「体育の日」に新潟県の火打山(2462メートル)に登った。
「日本百名山」の一つで、妙高山(2454メートル)、焼山(2400メートル)と並ぶ頸城三山の最高峰。コースタイムは上り5時間半、下り4時間のハードな日程だ。
まだ真っ暗な5時前に、長野市の自宅を友人の車で出発。旧北国街道から国道18号に合流し、信越大橋を渡って間もなく左折、杉野沢集落を経て笹ケ峰高原へ向かう。
途中、猿の群れが道路をふさいでいたが、車が近づくと、クモの子を散らすように逃げ去った。牧場を過ぎ、休暇村妙高の笹ケ峰キャンプ場手前の駐車場が登山口だ。入山届を出し、6時半に登り始める。
樹林帯の中の木道を進むと、色鮮やかな紅葉が朝日を浴びて輝きを増す。ナナカマドやウルシ、カエデの赤に、ダンコウバイやシラカバの黄色い葉が交じり、上部ではブナの黄葉が目を奪う。

「ドードー」と音を立てて流れる黒沢の橋を渡り、十二曲りの急登に入る。ここを登りきっても、次の休憩地点、富士見平まで長く急な上りが続く。富士見平で妙高山へ向かう道と分かれ、しばらく行くと、登山道はほぼ水平な巻き道になる。
程なく、端正な三角形の火打山と、山頂の下から白煙が上がるドーム型の焼山が現れる。一帯は広い平原となり、池塘(ちとう)が点在する高谷池(こうやいけ)に着く。ここまで3時間半。ヒュッテで一休みしたかったが、暗くなる前に下山したいので先を急ぐ。
よく整備された木道を歩き、低い丘を越えると、再び池塘群が現れる。ここが「天狗の庭」だ。夏は高山植物が美しい場所だが、今は一面の枯れ野原。木道の脇には、整備の際に余った建設資材が幾つも梱包(こんぽう)されて置かれている。

その先から最後の上りが始まる。北側は夏でも雪が残る崖となり、通行不能箇所があるためか、ネマガリダケのやぶを切り開き、新しい登山道に付け替えてある。
ライチョウ生息地のライチョウ平を過ぎると、道は前日の雨で泥沼のようだ。水たまりを避けて進んでも、靴とズボンの裾は泥だらけ。最後に乾いた道を登り詰めると、山頂に出た。
朝は晴れていたのにいつしか曇り空に変わり、ガスも湧いてきて視界はいまひとつ。南側は黒姫山や戸隠連峰の高妻山、乙妻山、西岳などが望めるものの、西側はガスに覆われ、焼山の間近な姿はおがめずじまい。北側はガスの切れ間に、時折、日本海がのぞいた。
ヤッケを着込み、大急ぎで弁当を食べ、12時半に下山開始。天狗の庭まで来ると、ヘリが何度も往復しながら建設資材の入った梱包をつり上げ運んでいた。
高谷池ヒュッテで休憩後、下山を急ぐ。途中から雨になり、雨具を着る。30分ほどで雨は上がる。標高が下がるにつれ、雨上がりの紅葉が鮮やかさを増す。富士見平から下はほとんど休まずに下り、17時前に登山口に着いた。
歩数計の記録は3万9千歩余。2人とも70歳を間近に、まだまだ登れると自信を深めた山行だった。
(2015年10月24日号掲載)
=写真=端正な姿を見せる火打山
=写真=山頂付近から見下ろす天狗の庭