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069 ロワール古城巡り シュノンソー城 ~女性の愛憎劇が詰まった城~

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 15世紀に王侯貴族が競って優美な城を造ったロワールの古城の中でも、ひときわ人気なのがシュノンソーだ。ロワール川の支流シェール川を、美しい白い足でまたぐように立つ城は「水辺に広げた白鳥」とも呼ばれる。

 長い並木道から白い塔に向かうアプローチには心ときめく。おとぎ話か映画のワンシーンのようだ。左右に美しい庭が広がり、さらに進むと、美しい橋げたが見えてくる。ここから見る城の姿が、まさに白眉である。

 この城の特筆すべき逸話は、1人の王をめぐる2人の女性の確執である。ダビンチをフランスに招き、文化後進国から先進国に押し上げたフランソワ1世の長男が急死。次男アンリ2世に王位継承権が回ってきた。このアンリ2世をめぐる愛憎劇だ。

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 戦争などで財政的に逼迫(ひっぱく)していたフランソワ1世は、イタリアの富豪メディチ家から、アンリの嫁としてカトリーヌ・ド・メディシスを迎えた。共に14歳。当時は政略結婚が定番だった。

 カトリーヌは、フランスの食文化などを大変革させた立役者。それまで素手で食事をしていた習慣を変えたのは、カトリーヌである。彼女は夫アンリにとても献身的だった。

 もう一人は、フランソワ1世がアンリ2世のしつけを全て任せていた19歳年上の未亡人ディアーヌ・ド・ポアチエである。

 才色兼備で折り紙つきの女性。フランソワ1世が宿敵カール2世との戦いに負けて捕虜となり、代わりに人質となったのが2人の息子だった。ディアーヌは幼いアンリを元気付け、励まし続け、アンリは彼女への感謝を忘れなかった。

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 解放されて戻ったアンリは、彼女への思いを募らせていく。拒み続けたディアーヌもついに陥落。アンリは生涯彼女を愛し続けた。

 これを知ったカトリーヌは、激しく嫉妬する。だが、持参金目当ての縁談ゆえ、アンリは本妻のカトリーヌに、跡取りを設ける以外の関心はなかった。

 カトリーヌを大きなショックが襲う。お気に入りのシュノンソー城は、当然、正妻の自分にくると当て込んでいたはずが、王になったアンリは、愛人ディアーヌに与えたのだ。

 カトリーヌが城を取り返す転機は、アンリが騎馬試合で重傷を負ったこと。数日後に息を引き取るまで、カトリーヌはディアーヌを病室に入れなかった。王に代わってカトリーヌは権力を振るい、すぐさまシュノンソー城を開け渡させた。

 ディアーヌは、それまでカトリーヌの所有だったショーモン城に強制退去させられた。そこは、不気味な黒魔術などの道具でいっぱい。ディアーヌは故郷のアネ城に移ってしまった。

 カトリーヌはシュノンソー城に手を加えた。ディアーヌのDとアンリのHを組み合わせた3階天幕の刺しゅうの文字のうち、Dの角を切り取りカトリーヌのCに変えさせる。ディアーヌが川に架けた橋げたを、二層にして舞踏会場にした。故郷フィレンツェの橋ポンテ・ベッキオを思い描いて造らせたのだ。

 女性にまつわる多くの秘話が詰まっているこの城は、生活感もあり見飽きることがない。
(2015年10月31日号掲載)

=写真1=愛憎劇の舞台となったシュノンソー城
=写真2=シュノンソー城の回廊
 
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