最近は「不妊症」という言葉が特別なものではなくなり、不妊治療も「妊活」などと言われ、社会で受け入れられるようになりました。
体外受精がイギリスで始まってから約40年。日本では30人に1人の赤ちゃんが体外受精の結果、生まれています。不妊症の患者さんは右肩上がりで増えており、10組のカップルのうち3組が不妊症です。
原因の一つに晩婚化
不妊症が増加している原因の一つは晩婚化であるといわれ、長野市民病院の不妊症外来の初診患者も35歳以降の人がほとんどです。調べてみると、非常に高度な子宮内膜症を患っていたり、閉経に近い状態であったり、夫の精子が極めて少ないといったことがあります。このような場合は自然での妊娠は困難で、体外受精をすることになります。
ただし、体外受精は万能ではありません。39歳で元気な赤ちゃんが生まれてくる確率は約1割、40歳以降ではわずか数%です。体外受精は自費診療なので非常に高額ですが、何回も挑戦する方も多くいます。
当院では、治療をしている人の約70%が妊娠しています。しかし、残念ながら良い結果に結びつかない場合も多く、スタッフも「もっと早く不妊治療を始めていたら」「早く検診に行っていたら、内膜症がここまでひどくなることもなかったのに」などと悔しい思いをしながら、患者の皆さんをサポートしています。
不妊は予防できる
私たちは、不妊はある程度予防できると考えています。妊娠には明らかな「ゴールデンタイム」があります。それは35歳以下です。仕事を持っていたとしても、計画的にその間に出産することが第一です。
食生活も大事です。極端な肥満や痩せは、排卵を阻害します。また、喫煙は閉経を早めます。
婦人科検診を若いうちから受け、リスクとなる病気を早期に見つけ、治療することも大事です。初期の子宮内膜症は、ピルを内服することで悪化を防げます。子宮頸(けい)がんは初期のうちに見つければ簡単に切除でき、その後の妊娠も可能です。施設によっては卵巣の予備能を調べることもでき、早発閉経になる可能性を知ることができます。

若者が結婚してたくさんの子どもを持つことが幸せであると感じることができ、多くの子どもが生まれる社会になることを願ってやみません。
(2015年12月5日号掲載)
=写真=西澤 千津恵(婦人科科長=専門は不妊症、悪性腫瘍)