熱傷(やけど)は、老若男女を問わず頻度の多い外傷です。
原因のうち最も多いのは、熱いお湯や天ぷら油など高温の液体によるものですが、アイロンやホットカーラーなどの熱性固体、炊飯器の蒸気の吹き出し口やファンヒーターの温風などによる子どもの熱傷も、多くみられます。
広範囲なら病院へ
熱傷を負ってしまったら、直ちに冷却することが大切です。熱による組織の損傷が深くなることを防ぐだけでなく、受傷部位の炎症を抑え、痛みを緩和することができます。
衣服の上から受傷した場合は、すぐに脱げれば脱がせ、脱ぎにくい場合は衣服の上から直接水道水などを流します。服に火が燃え移るなど、全身の広範囲にわたる熱傷は致命的になることがありますので、すぐに病院へ搬送してください。
熱傷は、治癒後にケロイドや瘢痕(はんこん)となる場合があります。浅い熱傷では創痕を残さずに治癒することが多いですが、深い熱傷が混在していて傷跡が残ることもあります。
また、細菌感染を起こすと治癒まで時間がかかり、ケロイドなどの原因になるので、抗生剤の投与と受傷部の洗浄が必要です。食品用ラップによる密封閉鎖療法は、感染症を引き起こすことがあるので、決して行わないでください。
顔の熱傷では、熱風を吸い込むことによって気道熱傷になっている場合があります。気道がむくんで呼吸困難になり、人工呼吸器が必要になることもあります。鼻毛が焦げていたり、鼻腔(びくう)内にすすが付いていたりする場合は要注意です。
手の甲は皮膚が比較的薄く、熱傷が腱(けん)や関節などに及ぶと、高度な機能障害を残すことがあります。早めに受診してください。
酸やアルカリなどの化学物質による熱傷もあります。高温の物質による熱傷と違い、化学熱傷は物質が除去されるか不活性化されるまで反応が進行するため、深い損傷となることが多くあります。家庭でも消毒剤や漂白剤などが原因となるので、素手での作業は避けましょう。
大量の流水で流す

アルカリ(水酸化ナトリウム、アンモニア、生石灰など)は脂肪と反応しやすく、表面を洗い流しても皮下で組織損傷が進行しやすいので危険です。農薬や果樹の消毒剤などはこのような性質を持つ物が多いので、農業に従事する人は注意してください。薬品が肌に直接触れてしまったら、すぐに大量の流水で洗い流し、医療機関を受診しましょう。
(2016年1月9日号掲載)
=写真=星野 夕紀(形成外科医師=専門は形成外科)