骨粗しょう症は、骨折を起こしやすい骨の状態です。立っている状態から転倒しただけで骨折したり、転んでいないのに骨折してしまったりする場合もあります。高齢になってから発症することが多い病気ですが、高齢者が骨折すると、その後の運動能力の回復は難しく、寝たきりや介護が必要な状態になってしまうこともあります。
難しい短期での治療
骨粗しょう症は短期間で治療することが難しいため、予防が大切です。特に予防は若いころから始めましょう。
骨密度は思春期に高まり、18~20歳で最大値に達します。40歳代前半までそれが持続し、50歳前後から低下していきます。骨粗しょう症を予防するためには、若いころになるべく骨密度を高め、それを維持することが大切です。
幼年期から10代(特に思春期の10~14歳)は、カルシウムが十分に含まれたバランスの良い食事を取り、運動をしっかりすることで、骨密度はどんどん高まっていきます。
ただし、カルシウムの摂取量は多ければ多いほどいいというものではありません。最も多く摂取すべき思春期でも、1日の摂取目標量は800~1000ミリグラムです。食事を制限するダイエットは、骨の形成の大きな妨げとなり、よくありません。
20代から40代前半の人は、不規則な生活をしないことを心掛けましょう。仕事や育児に追われ、生活習慣が乱れやすくなる時期ですが、不規則な食生活や運動不足、過度の飲酒・喫煙は、骨粗しょう症のリスクを高めます。
50代以降、特に女性では閉経後、骨密度は急速に低下していきます。女性は、骨粗しょう症になる危険性が男性の3倍に上ります。骨密度を保つために、栄養バランスの良い食事を取り、運動習慣を身に付けてください。
容姿変化にも注意を
骨密度の検査もなるべく受けるようにしましょう。▽女性▽閉経時期が早い▽骨折の経験がある▽食事内容が偏っている▽過度の飲酒・喫煙をすることがある▽運動不足▽親が骨折したことがある▽残っている歯の数が20本未満―これらの項目のいくつかに当てはまる人は、特に注意が必要です。若いころより身長が2センチ以上低くなった、背中が丸くなってきたといった容姿の変化がある人も、骨粗しょう症による脊椎の骨折の危険があります。

骨粗しょう症の患者は日本に1300万人いるとされますが、治療を受けているのは6分の1以下といわれます。自分や家族の骨密度に関心を持ち、心配になったら整形外科医に相談してください。
(2016年1月16日号掲載)
=写真=藍葉 宗一郎(整形外科科長(兼)四肢外傷・機能再建センター科長=専門は整形外科)