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076 南仏巡り カルカソンヌ ~ヨーロッパ最大の城塞都市~

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 地中海沿いを訪ねたら、ちょっと足を延ばして、このヨーロッパ最大の城塞(じょうさい)都市を見るのがお薦め。昼間のすごさもさることながら、夜がいい。

 フランスには、「カルカソンヌを見ずして死ぬなかれ」ということわざがある。「ナポリを見て死ね」は世界的に有名だが、フランス旅行中にこのことわざを何度か聞いた。

 カルカソンヌは、スペインとの国境をなすピレネー山脈の北にある。ここの砦の起源は紀元前2世紀にさかのぼる。古代ローマ人がつくった植民地だった。交易上の地理的な利便性も手伝って幾多の困難や抗争の舞台に立たされたのも当然だった。

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 特に交易の繁栄から人の行き来が盛んになった11世紀から13世紀には大きな転機を迎える。大変に厳格な教義で知られたキリスト教の一派、カタリ派が北フランスの十字軍の癇に障った。ギリシャ語で「清浄」を意味する特別な儀式を信じる一派を異端だとされて、ルイ9世らの激しい弾圧で火刑を受けたり、内部告発をされたりする受難の時期があった。

 しかし、この堅固な砦は、為政者によるさらなる建造で、今では「ヨーロッパ最大の城塞」へと変貌する。後の城造り専門家に「16世紀末までに通用した軍事施設のイロハに、完全にのっとっており、主な防衛施設はこの城に全て備わっている」とまで言わしめた。

 この全景の美しさは、離れた鉄道駅から見上げても分かる。市内を流れるオード川に架かるヴェー橋から見ると、横に長いその姿は、「美しい」という形容詞しか、使いようがない。

 中に入ると、意外なことに、レストランや教会、そして郵便局まである。古代ローマ人によってガリア人と呼ばれたケルトの人々の彫刻や埋葬品が、美しく、そして歴史的な重要性を醸し出しながら、博物館に安置されている。ケルト文化の象徴である丸十字の飾りもある。

 キリストにまつわる古い浮き彫りや透かし彫りの作品群は、ため息をつかせるほどだ。

 ナルボンヌの門を出て右手にある跳ね橋の手前に、矢来(やらい)と呼ばれる城壁の間の空間がある。これは、ヨーロッパを旅してきた者であっても、その幅の広さに驚かされる。

 城の圧巻は夜。美しい古代ローマン橋を前景に、ライトアップされた巨大で横に広がるカルカソンヌ城塞を見ていた私は「カルカソンヌを見ずして死ぬなかれ」ということわざを、しみじみ思い起こしながら、生かされている今の幸せを感じた。
(2016年3月26日号掲載)

=写真=堅固で広がりのある城塞
 
ヨーロッパ美の旅