
「自助具」という言葉をご存じでしょうか。自助具は福祉用具の一つで、けがや病気で日常生活の動作がうまくできない場合に、その動作を行いやすいよう工夫された道具のことです。私たち作業療法士は、使う人の状態や要望に合わせて、市販されている自助具を選定・改良したり、自作したりしています。
今回はその中から、握る力が弱くなった、一方の手が使いにくい、手の細かな動きが苦手―といった人に向けた自助具を紹介します。
(1)太柄スプーン
食事のときに箸が使えなくなると、多くの人はスプーンやフォークを使います。握る力が弱く、手から落ちてしまう場合は、柄を太くするスポンジやシリコン製のグリップを使用すると握りやすくなります。
(2)介助箸
「和食はスプーンやフォークでなく箸で食べたい」という人には、介助箸を勧めています。箸先が交差せず、麺類や豆類もつかみやすい工夫がされています。
(3)ボタンエイド
ワイシャツやブラウス、ズボンなどのボタンが留めにくい場合に使います。先端をボタン穴から差し込んでボタンに引っ掛け、そのままボタンエイドを引き抜くと、ボタンを留められます。
(4)片手で切れるペーパーホルダー
排せつ後、トイレットペーパーを切り取ることが難しい場合に使用します。介助者を呼ばなくて済み、既存の物と交換して設置することができます。
(5)台付き爪切り
爪切りが難しい場合に使います。市販されていますが、家庭で作ることもできます。約2センチの厚さの板を爪切りの横幅の大きさに合わせて切り、刃先を台からはみ出してネジなどで固定します。
(6)ループ付きタオル
手の届きにくい背中を洗いやすくする物で、普通のタオルを加工して作ることができます。洗体タオルを2枚用意し、縫い合わせます。両端とも20センチほど折り返して縫い、輪を作ります。使うときは、両方の輪に手をくぐらせて体を洗います。

自立した生活が送れることは、多くの人にとって喜びです。特に身の回りの動作は、誰かに手伝ってもらえたとしても、自分でしたいと思うものです。思うように体が動かせず、不便を感じる場合は、自助具を試してみてはいかがでしょうか。
(2016年4月2日号掲載)
=写真=涌田みちる(診療技術部 リハビリテーション科 作業療法士)