092 肺炎球菌 ~重い合併症の恐れも 加齢で免疫力が低下~

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 肺炎球菌は、主に気道の分泌物に含まれ、唾液などを通じて飛沫感染する細菌です。

 飛沫感染とは、せきやくしゃみ、会話などによって空気中に飛び散った病原体を吸入することで感染することをいいます。体調を崩して免疫力が低下していると、肺炎球菌によって気管支炎や肺炎、敗血症などの重い合併症を引き起こすことがあります。

ワクチン定期接種に
 免疫力は加齢とともに低下します。65歳以上の人は、見た目は元気でも感染リスクが高くなっています。日本人の死亡原因の第3位は肺炎で、肺炎で亡くなる人の約95%が65歳以上です。肺炎球菌は、成人の肺炎を引き起こす原因菌の約30%を占め、最多です。

 2014年10月から、予防接種法に基づく定期接種に、高齢者の成人用肺炎球菌ワクチンの予防接種が加わりました。定期接種は市町村が実施する予防接種で、ワクチンの種類、対象者、期間などが定められ、公費助成が受けられます。

 ワクチンは、病原体の毒性を弱めたり、無毒化したりしたものです。接種すると、その病気への「免疫」ができ、実際に病原体が体内に侵入しても発症しなくて済んだり、病状が軽く済んだりします。

 高齢者の定期接種に用いられる成人用肺炎球菌ワクチンには、約90種類に分類される肺炎球菌のうち、病気を引き起こしやすい23種類の菌の成分が含まれており、それらの菌に対し「免疫」をつけることができます。

 肺炎の全てを予防できるわけではありませんが、肺炎球菌が原因で起こる肺炎などの感染症の約7割に効果を発揮するとされています。接種後、約3週間で「免疫」ができ、個人差はありますが、5年間程度、効果が期待できるといわれています。

日常の肺炎予防策
 高度高齢化社会を迎えた日本では、肺炎予防の重要性が増しています。毎日できる予防法として、うがい、手洗い、マスクの着用があります。持病の治療に努めたり、禁煙をしたり、からだの抵抗力(免疫力)を高めたりすることも有効です。誤嚥(ごえん)を防ぐために慌てて食べ物を食べたり飲んだりしないことや、歯磨きで口の中を清潔に保つことも大切です。

 規則正しい生活を心掛け、医療機関でワクチンを接種して、肺炎を予防してください。
(2016年4月23日号掲載)

=写真=丸山晴生(薬剤部科長補佐 感染制御認定薬剤師)

 
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