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078 南仏巡り ポン・デュ・ガール ~2千年前の巨大な水道橋~

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 「筆舌に尽くしがたい」というのはこういうことか。古代ローマ人の建築技術のすごさは数々あるが、ポン・デュ・ガールはとびきりのスケールだ。

 紀元50年ころ、山間の水源ユゼスから50キロ先のかつての小ローマ・ニームへの送水のために建設された。およそ6百年間もニーム市民の喉を潤す導水路の役目を果たした。1985年にユネスコ世界遺産に登録され、2千年前の姿を今にとどめている=写真。

 アビニョンからタクシーで45分ほど。ガルドン川をまたぐ3層の巨大水道橋だ。最上部の導水路は対岸までの距離が275メートルもある。中段は242メートル、下段は142メートル。古代ローマをほうふつとさせる半円のアーチが上段は35、中段11、下段の大アーチは6ある。

 この堂々たる姿は、さまざまな絵の題材になり、パリのルーブル美術館には、ユベール・ロベールの作品が展示されている。

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 タクシーから降りて小高い丘から見れば、その巨大さに圧倒される。この橋の中段を歩くと、両側に柵もなく、下を見ると川が眼下に。最上階に行けば、足がすくむ49メートルの高さだ。かつては最上部も歩けたが、手すりもなく老朽化のため上れない。

 「エミール」などを著したフランスの哲学者ジャン・ジャック・ルソーは、この橋の威容に圧倒され、「魂に高揚を覚えて、なぜ自分はローマ人に生まれなかったのかとつぶやいた」と感激の胸中を記している。

 古代ローマ帝国のアウグストゥス帝の下士官アグリッパの指揮の下に架けられたという。こうした巨大な水道橋は、スペインのセゴビアやトルコのイスタンブールにも残るが、川をまたぐこれほど大型の水道橋は初めてである。

 下のガルドン川では、夏になると、水遊びに来る家族連れや夕涼みに来る地元民もいる。下段の22メートルから飛び込む猛者もいるという。夜はライトアップされて幻想的だ。

 交通の便が良くないため、ツアーか個人でタクシーを頼むしかない。それでも、わざわざこの歴史遺産を訪ねる価値は十分ある。
(2016年5月14日号掲載)
 
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