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080 南仏巡り ゴルド ~中世が息づく「鷲の巣村」~

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 アビニョンのタクシー運転手が「ぜひ」と勧めてくれたのが、この不思議な町ゴルド。アビニョンの東40キロ足らず、壁にへばりつくような岩山の村である。向かいの高台にある展望台から見ると、スペインの古都・トレドにも似ている。「鷲(わし)の巣村」という別称もある。

 「どうだい。ここはフランスで最も美しい村に選ばれたこともある。自慢の村だ」と運転手は胸を張る。画家のマルク・シャガールらが紹介して、今では有名な観光地になった。

 てっぺんにある城に通じる道と門は、どこをとっても遺跡のよう。新しいところでも、16世紀、ルネサンス期の場所が多い。頂上にある城は、11世紀にサボア家がフランス王国からの支配に対して、この地方(プロバンス)の独立を守り抜いた領主のシンボル。第2次大戦では対ドイツのレジスタンス運動の中心にもなった。

 小高い山の全てが石づくり。かつて、フランス人の祖先であるガリア人が造った石積みの上にモルタル無しの平たい石を積み上げるだけの「ボリー集落」という独特な小屋が残っている。村の郊外には保有地区もある。

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 家の地下には、見事な室があった。子供の遊び場になったり、ワインの保存庫になったりする。温度が夏冬変わらないことが適しているという。「至る所、石だらけで、掘れば遺跡ということが不便なこともある」と言う長老が、こんな話をしてくれた。

 プロバンスには強風のミストラルがある。ミストラルは南東部で発生し、ローヌ川を通って地中海に南下し、いったん吹き始めると、3日間続くと言われているのだ。

 ―昔、村人はミストラルを檻(おり)の中に閉じ込めたのだ。すると、なんと水が濁ってしまい、蚊が大量発生。伝染病がまん延する結果になった。村人はミストラルを解放してやった。これ以降、ミストラルは厄介者を一緒に連れ去ってくれるという信仰が生まれ、この北風と共に生きているのだよ―

 なるほど、地元にはミストラルと共に生きる石灰質の粘土で作った伝統衣装を着たサントン人形が、所狭しと展示販売されていた。
(2016年6月11日号掲載)


=写真=石造りの村「鷲の巣村」
 
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