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081 フランス地方巡り モンサンミシェル ~観光客あふれる神秘の島~

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 言わずと知れた世界有数の人気観光スポット。フランス北西部のモンサンミシェルは毎年、「行ってみたい世界の観光スポット」ランキングでトップを争う。

 英仏海峡に流れ込む川の河口沖に浮かぶこの島は、トンブ山と呼ばれていた。墓場とか高台を意味している。708年、聖オベール司教が、受胎告知のガブリエルやラファエルと並ぶ大天使の一人「聖ミシェル」の「修道院を建てるように」というお告げを聞いたのが始まりだという。

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 私の故郷に近い神奈川県江の島のように、海にぽつんと浮かぶ小島は神秘的でもある。かつては、満潮時に島全体がサンマロ湾の海水に包まれたので、より神秘性を持たれたのだろう。1870年に島を結ぶ道路が完成。修復工事を重ねて現在に至っている。

 教会とは違い、ここは修道院。内部に華やかさはない。修道士、修道女たちの瞑想(めいそう)の場である。この立地と相まって、巡礼者たちの祈りの場所であった。以前は、湾の満潮時に猛スピードで潮が押し寄せてきたので命がけだった。

 疲れ切った彼らの胃袋を満たしてあげたのが、一人の女性料理人だ。名前はプーラール。卵だけのシンプルで元手のかからないオムレツが名物になった。今でも観光客の名物になっている。ただ、飽食の舌の肥えた現代人には、味覚的に物足りないという評判も聞く。

 目に焼き付いたのは、大きなバルコニーのようなフクル塔から見た砂地。ガイドの案内によるツアー客が、ズボンの裾をまくりつつ一周する光景がほほ笑ましい。1カ所にとどまっていると、底なし沼のように足が沈むので、注意が必要なのだ。
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 疲れていたので、洞窟内に造られジャンヌ・ダルク像が立つサン・ピエール教会で、1時間ほど休ませてもらった。大天使ミシェル像が飾られている。

うとうとしていると、不思議な声が聞こえてきて、「すわ、ミシェルのお告げか」とわれに返ると、大学生らしき6人の男性。像の前で私服のにわか聖歌隊だった。約15分、3曲ほど歌って退席していったが、立ち去る際にひざまずいた彼らの敬虔(けいけん)なしぐさが心を打った。

 私たちが訪れたのは、大潮で海水が川を逆流する「マスカレ」という現象の日だった。ぽっかり海に浮かぶ夜の島は、ライトアップもあって、一段と幻想的だった。
(2016年6月18日号掲載)

=写真1=人気のモンサンミシェル
=写真2=島へつながる道路
 
ヨーロッパ美の旅