記事カテゴリ:

082 フランス地方巡り ブルターニュ ~伝統文化を大切にする気風~

82-binotabi-0702p.jpg
 フランス最西端にあるブルターニュ地方は、南は大西洋、北は英仏海峡に面し、イギリスの影響を色濃く残す地である。

 私にとってここの最大の魅力は、ヨーロッパの先住民と言われるケルト民族が築き上げてきた文化をかたくなに守り続けている個性の強い風土だ。神話や乱石積みの建物などがあちこちに見られる。3点を取り上げたい。

 まずは巨石遺跡だ。10メートルほどの高さにもなった「メンヒル」を訪ねた=写真。メンヒルはケルト語で「細く長い石」を意味し、新石器時代の遺物だ。ケルト人にとって石は神聖なものであり、アーサー王が石に刺さっていた剣をいともたやすく引き抜いたという伝説は、よく知られている。

 南西部の大西洋岸には「カルナックの巨石群」がある。主要な2カ所に3千個近くの石が並べられている。さらに海を隔てて北のイギリス南部にある「ストーンヘンジ」は有名だ。

 二つ目は、世界一との呼び声もある「ゲランドの塩」。古代ローマから続く塩田がゲランドだ。沿岸に稲田のようにして海水を引き、結晶状になった塩を作る。この塩がフランス料理のもとになっていることは、日本ではあまり知られていない。東京のデパートで店頭に出ている値段は、日本名産の数倍に達する。

 私事だが、私は30年以上も、市販されているさらさらの塩は使わず、岩塩や海水からの天然塩しか使っていない。かつて信大医学部の教授から「電気分解しただけの食塩、塩化ナトリウムは体に良くない。昔は、元気のない金魚に塩をあげると、元気になったというのは、天然の塩にはミネラルが入っていたから」と指摘されたことがあるからだ。
82-binotabi-0702m.jpg
三つ目に挙げたいのは、イギリスから30年前に移住したジェーンさんとポールさんの夫妻だ。地方駅ドル・ド・ブリターニュで下車してタクシーで10分ほどの場所で、ホテル「オー・ボン・アクイユ」を営み、この地の良さを訴え続けてリピーターを集めている。

 ケルトの素朴な石造りの建物で、ホテルの名前はフランス語で「温かいもてなし」という意味だ。モンサンミシェル観光の拠点にもなっている。客を迎える飲み物はもちろん紅茶だ。

 夫妻は「ブルターニュの良さは、華やかさではなく、伝統文化を大切に残す気風と他人を温かく迎える人々の素朴さ」と言い切った。
(2016年7月2日号掲載)
 
ヨーロッパ美の旅