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13 新潟くびき野レールパーク ~地元熱意で車両戻る 動態保存され乗車も~

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 新潟県上越市の田園風景が広がる一角にある鉄道保存施設「くびき野レールパーク」。かつてこの地域を走っていた「頸城(くびき)鉄道」の車両が動かせる状態で「動態保存」されているというので、一般公開日に訪れてみた。

 JR信越線、えちごトキめき鉄道の直江津駅から百間(ひゃっけん)町方面へ向かうバスで、終点の「海洋センター」へ。下車後、歩いて5分ほどで着いた。

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 頸城鉄道は1914(大正3)年に、軌道幅が狭いといった低規格の「軽便鉄道」として開業した。現在は上越市内となる旧国鉄黒井駅に隣接する新黒井から浦川原の約15キロを結んだ。旅客や米の輸送で重要な役割を担ったものの、自動車の普及などにより、71(昭和46)年に廃線となった。

 時は流れて2000年に、旧頸城村(05年上越市と合併)の商工会が「村を元気にしたい」と、まちおこしの委員会を発足。当時1両だけ残っていた2号蒸気機関車を生かそうという話が持ち上がった。

 そこに、同鉄道廃線後に車両を引き取って六甲山中に残していた会社経営者の遺族が兵庫県内にいることが分かり、譲り受けて百間町に。合計9両もの車両が30年ぶりに「里帰り」を果たし、大掛かりな修繕を経て、レールパークが05年に開園した。

 今は、委員会組織がNPO法人「くびきのお宝のこす会」に変わり、レールの敷設や運営、運転までのすべてを、会員や有志のボランティアで担っている。会長の市川義雄さん(71)は「地域みんなの『熱意』が奇跡を起こした」と振り返る。車庫内に飾られた写真の数々は、今に至る苦労と喜びを感じさせる。

 5月から9月までの第3日曜日を中心に企画される一般公開では、30分に1回、「DC92型ディーゼル機関車」が牽引(けんいん)する客車と、「ホジ3」型ディーゼルカーの乗車体験ができる。ホジ3は1914年製の客車を改造。板張りの車内とエンジンの振動は、今の列車では味わえない風情だ。子ども連れや鉄道ファンたちを乗せ、美しい田園を横目にゆっくりと構内を走る。

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 夢のような復活劇ではあったものの、「年月がたち、会員の高齢化が進んだ」と副会長の西山義則さん(63)。熱意を次の世代に引き継ぐ大事な時期を迎えている。「いつまでも残ってほしい」と願いながら帰途に就いた。

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 くびき野レールパークの次回一般公開は7月17日(日)。入園、乗車は無料。詳細は「くびきのお宝のこす会」ホームページで。寄付も受け付けている。同パークへの路線バスは日曜の便が非常に少ないので、事前に「頸城自動車バス」の運行ダイヤを確認するとよい。
(森山広之)
(2016年7月9日号掲載)

=写真1=動態保存されているホジ3(左)とDC92(右)
=写真2=展示されている2号蒸気機関車。廃線後は西武鉄道山口線へ貸与されたが、その際旧国鉄長野工場で整備
 
小さな日帰り旅