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084 フランス地方巡り シャルトル ~奇跡の「ピカシェットの家」~

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 何とも不思議な家だ。家の外観や内部全てに、ガラスや陶器の破片が張り付けられている。

 パリから列車で1時間足らずのシャルトル。ゴシックとロマネスクの異なる尖塔があるノートルダム大聖堂がある中心街から、バスかタクシーで30分ほどの所にある。大聖堂は「奇跡の建造物」と言われているが、もう一つの奇跡がこのミニ邸宅「ピカシェットの家」だ。ピカシェットは「物をもらって集める人」を意味する。

 それは細い路地をすり抜けた正面にあった。一人の墓守人が、廃棄されたり欠けたりした花瓶や皿などを、四半世紀にわたり拾い集めた。集めた破片は15トンに上る。

 一部屋一部屋を飾り付けていった。カラフルな入り口から右に反時計回りに、台所や寝室、礼拝堂、夏の家...。室内にはモナリザを模したモザイクもある。インテリアはシャルトル・ブルーを意識した圧巻の青壁の壁画。食事をするテーブルのある部屋の壁にはモンサン・ミシェルが描かれ、2羽のツバメが修道院に向けて飛んでいる。

 屋根には地元生まれらしく、シャルトル大聖堂のミニ版が見える。外壁には、ニワトリ、野鳥、チョウや、各地の大聖堂が40以上も表されていて賑(にぎ)やかだ。

 この家を造ったのはレイモン・イシドール。スペイン・バルセロナのサグラダ・ファミリア(聖家族)教会を設計したアントニ・ガウディにちなみ、「ミニ・ガウディ」と呼ばれるのも、むべなるかなである。

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 1900年9月生まれのイシドールは、13歳で地元の鋳型職人の見習いになり、24歳で11歳年上のアドリエンヌと結婚した。29歳で宅地を購入し、翌年にピカシェットの家を造り始めた。この時の仕事は道路舗装工事だった。35歳で墓守の職に就くと同時に、家内部の装飾を始めた。

 礼拝堂や夏の家を造ったのは50歳の時。隣の敷地を購入して塀や庭を整えた時は、60歳を過ぎていた。65歳の誕生日前日、息を引き取った。 
(フランス地方巡りはおわり)
(2016年8月27日号掲載)

=写真=拾い集めた破片で造られた「ピカシェットの家」

 
ヨーロッパ美の旅