096 機能性胃腸症 ~気付かず放置の例も 治療で生活の向上を~

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 胃のもたれ、みぞおちの痛みといった症状は誰でも経験があると思いますが、もしかしたら「機能性胃腸症」という病気かもしれません。

 機能性胃腸症とは、こうした症状が慢性的に続いているにもかかわらず、胃カメラなどの検査で異常が見つからない病気です。日本人の10~20%にみられるという報告もあり、決して珍しくはありませんが、病気であることに気付かないまま放置されているケースも少なくありません。

 主な症状は、つらいと感じる食後のもたれ感、食べ始めてすぐにおなかがいっぱいになる早期飽満感、みぞおちの痛み、みぞおちの焼けるような感じなどです。飲み過ぎ、食べ過ぎなどの思い当たる原因がないのに、こうした症状が現れたら、機能性胃腸症かもしません。

薬を医師と相談して
 診断はまず、同様の症状がみられる胃潰瘍や胃がん、逆流性食道炎でないことを確認します。胃カメラで異常が見つからず、ピロリ菌は陰性で、必要に応じておなかのレントゲンや超音波検査、CT検査、便潜血検査などを行った結果、異常がなければ機能性胃腸症の可能性があります。

 治療は内服薬で行います。初めに使う薬は胃酸の分泌を抑える薬や胃腸の働きを良くする薬です。これらを1カ月程度内服し、改善すれば機能性胃腸症として治療を続けます。

 改善しない場合は、他の病気でないか慎重に判断し、漢方薬や抗うつ薬、抗不安薬などを追加します。医師によっては初めに漢方薬を使うこともありますので、どんな薬を使うか医師とよく相談してください。

分からない原因
 機能性胃腸症はここ数年で注目されるようになりましたが、約30年前から盛んに研究されていました。しかし、「検査で異常が見つからない病気」ですので、はっきりとした原因は分かっていません。心理的要因や酒、たばこなどの生活習慣、サルモネラなどの感染性腸炎の罹患(りかん)歴、遺伝的要因、内臓知覚過敏、ピロリ菌などが関与していると考えられています。

 機能性胃腸症は、命が脅かされる病気ではありませんので、安心してください。症状はつらいですが、治療によって生活の質を向上させることができるかもしれません。「理由ははっきりしないが、ここのところ胃の具合が悪い」と感じている人は、近くの内科を受診してみてはいかがでしょうか。
(2016年8月27日号掲載)

=写真=小林 聡(消化器内科医長=専門は消化器、内視鏡)
 
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