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54 唐松岳 ~日帰りで剣岳などを大展望~

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 梅雨のさなか、7月中旬の土曜日に友人と2人で北アルプス後立山連峰の唐松岳(2696メートル)に登った。ゴンドラとリフトを乗り継いで行ける唐松岳は近年、学校登山をはじめ中高年にも人気の山だ。

 6時に長野市の自宅を出発。五輪道路で小川村を通るころ、雨になった。白馬村に入ると雨脚が強まる。引き返すかどうか迷ったが、八方尾根のゴンドラ駅駐車場に着いた時は小降りに。登山客も大勢いたので、行ける所まで行くことにする。

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 最初から雨具を着込み、足元にスパッツを付け、ゴンドラに乗り込む。上部の4人掛けリフトに乗り合わせた2人連れの山ガールは、やはり長野市からで、日帰りで唐松岳を往復するという。その一言で、古希が間近なわれわれも山頂まで行くことにする。

 リフトの下には高山植物が咲き乱れ、中でも濃いピンクのシモツケソウが目を引く。

 終点の八方池山荘から登山路に入る。雨にぬれた蛇紋岩の石ゴロ道は滑りやすい上、急斜面が続く。暑くてたまらないが、雨具を脱ぐわけにいかない。友人はTシャツになり、傘を差すことにした。

 間もなく八方池を見下ろす尾根道に出る。ガスで視界が閉ざされ、池の輪郭がおぼろげに分かるだけ。水面に白馬三山を映す絵はがきのような光景は望めないため、先を急ぐ。

 程なく樹林帯に入り、ねじまがったダケカンバの巨木が頭上を覆う下の樺(かんば)、上の樺を通過。まだ大量の雪が残る扇雪渓に出る。立ち上る水蒸気で、空気がひんやりとしている。大休止し、雨も上がったため雨具の上着を脱ぐ。

 雪渓を後にし、ひと登りすると森林限界を超え、丸山ケルンに。先に来て休んでいたあの2人連れ山ガールに、「まるでストーカーみたいだね」と声を掛けながら追い抜く。

 この辺から天気は急速に良くなり、先ほどまでの曇雨天がうそのように晴れてきた。稜線(りょうせん)からの展望が開け、鋭い岩峰が連なる不帰(かえらず)の峰がガスの中に浮かぶ=写真下。その右には白馬三山も見える。

 ルンルン気分で唐松岳へ続く最後の巻き道を進む。谷底へ落ち込む斜面には、白いチングルマとピンクのコイワカガミの花が群生している。難所のガレ場もよく整備され、危険を感じる場所はまったくない。

 登り詰め、唐松岳頂上山荘脇の稜線に達すると、目の前に大パノラマが広がる。正面に深い黒部谷を隔てて剣岳を盟主とする立山連峰。左手には、がっしりとした五竜岳。右手には三角錐の唐松岳。

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 山荘で休む間もなく頂上に登り、三百六十度の北アルプスの眺望を楽しみながら昼食を取る。風も穏やかで、心地よい日差しを浴びながら、ここまで来てよかったとしみじみ思う。

 同じコースを下山。最終リフトの時間まで余裕があるため、観光客でにぎわう八方池に立ち寄る。だが、池周辺はまたガスが立ち込め、視界が利かない。

 池を1周し、帰路は自然研究路の木道を下り、八方池山荘へ。再びリフトとゴンドラを乗り継ぎ、16時に駐車場へ到着した。山頂付近だけ好天に恵まれたのは、晴れ男を自認する友人のおかげか。
(2016年7月30日号掲載)

=写真1=大パノラマが広がる唐松岳の山頂
 
中高年の山ある記