
「慢性腎臓病(CKD)」は、長い時間をかけて(慢性に)経過する全ての腎臓の病気を指します。患者は日本に1330万人、成人の8人に1人いると考えられ、珍しい病気ではありません。
慢性腎臓病があると、脳卒中や心筋梗塞など心血管病を発症するリスクが高くなることが分かってきました。慢性腎臓病が進行して腎不全になると、体内から老廃物を除去できなくなり、最終的には透析や腎移植が必要になります。
この慢性腎臓病には、生活習慣病が大きく関係しています。
糖尿病と高血圧症
糖尿病は、血液中の糖分(血糖)が有効に使われずに、高い状態になる病気です。患者の約95%は食べ過ぎ、運動不足、肥満、ストレスなどの生活習慣が影響しているといわれています。
糖尿病を放置すると、腎臓に合併症が起きます(糖尿病性腎症)。慢性腎臓病が進行して透析が必要になる患者の約45%が、この糖尿病性腎症を原因としています。
高血圧症は、高い血圧値が持続する病気です。患者の80~90%は、塩分の多い食事やストレス、運動不足などの生活習慣により高血圧になるといわれています。
高血圧症も、腎臓に合併症(腎硬化症)を引き起こします。同じく透析が必要となる患者の約15%は、腎硬化症が原因です。
メタボも危険因子
このほか、コレステロールが高い脂質異常症も慢性腎臓病進行の危険因子とされています。足関節の周りが真っ赤に腫れて激痛を伴う「痛風」の原因、高尿酸血症も、腎障害の発症・進行因子となる可能性が示されています。
肥満やアルコールの取り過ぎで高くなる尿酸値、喫煙も腎臓病に悪い影響を及ぼすことが分かっています。
食べ過ぎと運動不足によって内臓に脂肪が蓄積した結果、糖尿病や高血圧、脂質異常などの症状が現れる「メタボリック症候群」も、慢性腎臓病の危険因子です。
日頃から食べ過ぎ・飲み過ぎに注意し、適度な運動を心掛けて肥満を解消し、定期的に健診を受診すること―。これが腎臓を大切にすることにもつながります。
(2016年10月15日号掲載)
=写真=掛川 哲司(腎臓内科部長=専門は腎臓)