099 子どもの誤嚥・誤飲 ~多くは家庭内で発生 症状あればすぐ受診~

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 子どもは生後6カ月を過ぎると、手にした物を何でも口に入れるようになります。2歳ごろに食物を区別するようになりますが、3歳を過ぎても異物を口に入れることがあります。

 異物の誤嚥(ごえん)・誤飲の多くは家庭内で起こり、命に関わる事故につながることがあります。周囲の大人が危険な食品やおもちゃ、生活用品を知り、事故を予防することが大切です。

 危険な食品や異物

 (1)窒息と誤嚥=空気の通り道(咽喉頭~気管~気管支)に入る場合
 異物が空気の通り道をふさいで呼吸ができなくなることを窒息、気管や気管支に入って肺炎などの原因になることを誤嚥といいます。

 スーパーボールやビー玉などの球形のおもちゃ、ピーナツ、キャンディー、ブドウなどの丸くつるつるした食品は、窒息や誤嚥が起きやすい代表的な危険物です。

 (2)固形異物の誤飲=食物の通り道(食道~胃)に入る場合
 鋭利な異物は緊急に摘出する必要があります。ボタン型リチウム電池や2個以上の磁石を飲み込むと、消化器官に穴が開くことがあります。

 硬貨や小さなおもちゃなど、丸みのある物は、胃に入れば多くは無症状で便中に排せつされますが、食道にとどまることがあるので、注意が必要です。

 (3)薬物誤飲=医薬品や化学製品を飲み込む場合

 誤飲する物で最も多いのは、たばこです。医薬品や家庭用化学製品も、重い中毒症状が現れ、命に関わる危険があります。トイレ用洗浄剤や漂白剤、防虫剤には、体の組織を傷付ける成分が含まれる物があります。灯油など揮発性の油は、吸い込むと重い肺炎を引き起こすことがあります。

 有効な対策

 乳幼児の口には、意外に大きな物が入ります。トイレットペーパーの芯(直径約4センチ)を通る物は誤嚥・誤飲の危険があると考えてください。次のような対策が有効です。
 ▽小さな生活用品やたばこは乳幼児の手の届かない高さ(1メートル以上)の場所に置く
 ▽おもちゃの対象年齢を確認し、3歳以下の子どもに小さなおもちゃを与えない
 ▽ピーナツなどの窒息や誤嚥の危険がある食品を、3歳以下の子どもに与えない
 ▽薬や化粧品、灯油タンク、給油ポンプなどを、子どもの手の届かない所に保管する
 ▽洗剤、防虫剤、かび取り剤、漂白剤、トイレ用洗浄剤は、子どもが開けられない扉のある所に保管する

 子どもが危険な異物を誤嚥・誤飲し、何らかの症状があるときは、すぐに医療機関を受診してください。症状がない場合は小児救急相談電話(#8000)などに問い合わせ、受診の必要があるか判断してください。
(2016年10月29日号掲載)

=写真=森田 舞子(小児科医師=専門は小児科一般)
 
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