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16 糸魚川 筒石 ~トンネル内に駅ホーム 土砂災害と闘った難所~

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 全国でも珍しいトンネル内の駅「筒石」(糸魚川市筒石)を訪ねた。長野から北しなの線に乗り、妙高高原駅でえちごトキめき鉄道(トキてつ)の「妙高はねうまライン」に乗り換え、さらに直江津駅で「日本海ひすいライン」へ。名立駅を発車した列車はすぐにトンネルに入り、数分後、暗闇の中に明かりが浮かぶホームに滑り込んだ。

 同線の前身だった北陸本線は元々、海岸沿いを走っていたが、険しい山と海に挟まれ、何度も土砂災害に遭った。中でも1963(昭和38)年3月には、筒石~能生間で蒸気機関車が崩れ落ちた土砂に乗り上げ、海岸まで押し流されてしまった。

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 その後、電化に伴い同区間をトンネル化。しかし、筒石地区は連なる山を背にしているため、筒石駅は全長約11キロの頸城トンネル内に設けられたというわけだ。69(昭和44)年に開業。北陸新幹線延伸開業に伴い、昨年3月にJRからトキてつに継承された。

 ホームと地上にある駅舎の高低差は40メートル。エレベーターやエスカレーターはなく、280段ほどもある階段を上るしかない。山の中にたたずむ駅舎は、さしずめ「秘境駅」だ=写真下。

 駅から海側へ下りて行くと、筒石地区の集落がある。江戸時代から続く漁村で、山と海の間のわずかな平地に家々が肩を寄せるように並ぶ。間口も奥行きも狭いため、木造3階建ての珍しい家並みが見られる。メインストリートの細い路地はとても情緒があり、懐かしい感じがした。

 旧北陸本線跡は糸魚川と上越市を結ぶ全長32キロの歩道兼サイクリング道になっている。隣の名立駅まで約4.5キロ。歩いてみた。

 訪れた日は快晴で、海からの風が心地よい。後ろから50代くらいの男女4人が自転車で追い越して行った。起伏も少なく、気軽にサイクリングが楽しめるコースだ。古くは交通の難所だったが、今は国道8号線を車が軽やかに行き交う。

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 途中、浜徳合の集落から少し山へ歩くと、北陸自動車道の橋の真下に、地層がむき出しになっている場所があった。「筒石・浜徳合ジオパーク」の「浜徳合砂岩泥岩層」だ。糸魚川市は至る所でさまざまな形態の地質を見ることができ、市内に24ある「ジオサイト(地質景観地)」のひとつだ。ここは約300万年前にフォッサマグナ(巨大な地層の溝)の海底に堆積した泥と砂の地層だという。

 のんびりと歩き、最後は道の駅「うみてらす名立」でひと休みし、帰途に就いた。
(森山広之)
(2016年10月15日号掲載)

=写真上=せり出す山と海に挟まれている筒石地区。旧北陸本線跡が同地区の背後を回り込むように通る
 
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