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19 宮中祭祀 ~年間30回以上にも 侍従も祭服でお世話~

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 天皇、皇后両陛下をはじめ皇族方は、宮中祭祀(さいし)を大切にし、常に国民の幸せと安寧を祈っておられます。皇居内には、天照大御神をまつる賢所(かしこどころ)、歴代天皇や皇族の御霊(みたま)をまつる皇霊殿、国中の神々をまつる神殿があります。この宮中三殿のほかに新嘗祭(にいなめさい)などを行う神嘉殿などもあります。

 元旦のまだ暗いうちに行われる四方拝(しほうはい)に始まり、大みそかの大祓(おおはらい)まで、祭祀は年間30回以上。宮中祭祀は憲法の政教分離の建前から、皇室の私的行事とされ、一般に公開されていません。

最も重要な新嘗祭
 私が東宮侍従をしていたころは、皇太子ご夫妻が両陛下に代わって務めていました。皇太子さまの宮中祭祀では、東宮侍従が2人ずつ交代でお世話します。初めに皇太子さまにお供して皇居の宮中三殿に付属する綾綺殿(りょうきでんで斎戒沐浴(もくよく)をし、心身を清めます。その後、東宮職の職員である内舎人(うどねり)に白の祭服を着せてもらいます。

 この祭服姿で皇太子さまの祭服のお服上げを、前と後ろの2人がかりで行います。私は前の係で、何枚もの衣服を帯で締めて結びます。途中で緩んでおかしくならないよう、慎重にしなければなりません。

 最後に冠を紙ひもであごのところで結びます。これも締め具合が緩いとぐらぐらして安定しないし、強過ぎればきつくて苦しくなるので手加減が重要です。ひもは後ろの係がはさみで切断。祭祀の時、私は皇太子さまの後に御剣をささげ持って従い、拝礼の間、廊下で床に伏していました。

 宮中祭祀の中で最も重要なのは、11月23日の新嘗祭です。天皇陛下が新穀を皇祖はじめ神々にお供えし、神恩に感謝した後、陛下自らもお召し上がりになる祭典です。

 夕方6時~8時の「夕(よい)の儀」と、深夜の午後11時~午前1時の「暁の儀」の2回行われます。この間に私たちは食事をし、日本酒も振る舞われます。私の役目は皇太子さまが歩く廊下をたいまつで明るく照らしながらご先導することでした。

 元旦には四方拝に続き、早朝、宮中三殿で行う年始の祭典、歳旦祭があります。皇太子さまは賢所、皇霊殿、神殿の順にお祈りされ、賢所から皇霊殿に行くころに夜が明けます。私は2年目の年に歳旦祭のお世話をしました。

 ある儀式に皇太子さまのご名代として出席することがありました。モーニングを着用し、シルクハットと手袋を手に持って式場に入ると皇族方をはじめ全員が起立して迎えてくれました。これには驚きましたね。

ご一家でコンサート
 多忙なお務めの中、皇太子ご一家のお楽しみの一つは、東宮御所の居所にあるグランドピアノを囲んで開くファミリーコンサートでした。ご一家は音楽がお好きで、皇太子さまはチェロ、美智子さまはピアノとハープ、浩宮さまはビオラ、紀宮さまは歌とフルート。礼宮さまはギターを少し弾かれました。

 そのころフルートを習い始めて間もない私が、成り行きでこのコンサートに参加することになり、ご一家の前で「ムーンリバー」を吹きました。人前でフルートを吹いた最初の経験でした。すると、美智子さまが奥から楽譜を持ってきて、「この曲を一緒に演奏しましょう」と言われました。私はとても楽譜を初見では吹けないので、お断りしました。
(聞き書き・船崎邦洋)
(2016年10月15日号掲載)

=写真=宮中祭祀で白の祭服を着て
 
竹元正美さん