101 乳房再建術 ~希望に沿い治療計画 患者に適した方法で~

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 乳がんの治療は年々進歩してきています。根治を目指す治療の一つとして手術を省略することはできませんが、無条件に乳房切除(全摘)を余儀なくさせられていたかつての時代から、可能な限り乳房を温存する乳房温存術の時代へ変わってきました。

 現在は、より整容性(本人が美容的に満足できること)を重視して、乳房を切除した患者さんに対する乳房再建術が行われるようになっています。

 長野市民病院では、1995年の開院時から乳房再建を行っています。2010年までの16年間は年平均5例でしたが、最近5年間(11~15年)では年平均15例と、乳房再建を希望する患者さんは確実に増えています。

対象は全摘の人
 当院で行っている乳房再建について、詳しく説明しましょう。

 対象は基本的に、乳房切除(全摘)になる人です。病変が乳頭(乳輪)に近い場合や、離れていても大きいしこりである場合、また病変が広範囲であったり、多発したりしている場合などは、乳房温存術の適応から外れ、乳房切除が必要と判断されます。

 この時点で乳房再建を希望された場合には、乳房再建術を担当する形成外科医師の話を十分に聞いてもらい、再建をどのように(自家組織を移植して行う/人工物を埋め込む)、いつ(乳房切除と同時/がん治療が落ち着いてから)行うか、本人の希望に沿って治療計画を立てます。

まずは医師に相談を
 具体的な進め方には、次の種類があります。

 (1)一次一期再建
 乳房切除と同時に自家組織による乳房再建を行う方法です。乳房の喪失感がなく、1回の手術で済むのが利点で、当院ではほとんどの症例がこの方法です。

 (2)一次二期再建
 乳房切除と同時に組織拡張器(エキスパンダー)を埋め込み、生理食塩水を注入しながら時間をかけて再建部位の皮膚を伸ばしていきます。十分に伸びたところで拡張器を摘出し、人工物や自家組織を入れる2回目の手術を行います。

 (3)二次再建
 乳房切除と化学療法などの乳がんの治療が落ち着いたところで行う乳房再建です。再建方法をじっくり考える時間がありますが、乳房の喪失期間があり、一次再建よりも手術の回数が1回増えます。

 再建をする、しないで悩む人もいると思います。また、人それぞれに適した方法がありますので、まずは医師に相談してください。
(2016年11月26日号掲載)

=写真=小沢  恵介(乳腺外科科長=専門は乳腺)
 
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