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22 タイ大使館 ~両陛下訪問を迎え 秋篠宮さまご夫妻も~

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 国内で8年余り勤務した後、1991(平成3)年1月にバンコクの駐タイ大使館に着任しました。

 大使館は、館員が日本人だけで60人以上の大所帯でしたね。ほとんどの省庁から出向者が来ており、岡崎久彦大使の下に、総務、政務、経済、広報文化、領事などの各班に分かれていました。私は総務班の参事官として、大使館の総括的役割と皇室、王室関係の仕事を担当。途中から公使になりました。

 着任して間もない2月23日、クーデターが起きてチャチャイ首相が軍に拘束されました。スッチンダー陸軍司令官が起こした無血クーデターで、軍の主導でアナン氏が首相に。

 即位後初の外国訪問
 さらに、翌年の92年にはスッチンダー氏の首相就任に反対して大規模な暴動が起き、多くの死傷者が出ました。「暗黒の5月事件」です。国王の働き掛けで鎮静化しました。そして、アナン氏が首相に復帰し、文民政権の樹立につながりました。

 このようにバンコクが緊迫状態になった時は、早朝に大使館に駆けつけ、情報収集と在留邦人の安全確保などに奔走しました。

 91年9月には天皇、皇后両陛下が即位後初の外国訪問としてタイを訪問されました。私はタイ外務省のスパット儀典次長らと準備を進め、8月に岡崎大使が事前に陛下に説明した際は、補佐のため東京に出張しました。

 両陛下がバンコクの空港に着かれた際、私の心の中に「日本からよくいらっしゃいました」という感動がありましたね。最初の王朝があったタイ北部のスコータイにも行かれました。ここでは、シリントン王女が準備した池のほとりでの光と音楽のショーが印象的でした。

 92年には秋篠宮さまが2度、タイを訪問されました。魚類研究のため9月に訪問された時、空港で「タイは暖かくていいですね」とおっしゃるんですね。暑くて閉口しているのに、いくら暑くても、暖かいと思えば過ごせるものだなと思った次第です。

 11月のご訪問は紀子さまとご一緒で、シリキット王妃還暦祝賀の公式訪問でした。秋篠宮さまは、スコータイが一番のお気に入りということで、紀子さまと同地を訪ねられました。また、高円宮さまもバンコクに来られました。

 すさまじい訪日熱
 日本人コミュニティーでも王妃還暦祝賀行事を行うことになり、大使館、国際交流基金、日本人会などが準備に当たりました。シンセサイザーの喜多郎さん公演、ピアニストの中村紘子さんとバイオリニストの前橋汀子さんを含む交響楽団コンサートがいずれも2回開かれ、多くの人たちが集まりました。

 頭を悩ませたのが査証発給の問題です。その頃タイ人の訪日熱がすさまじく、査証申請のため、前日の夕方から長い列ができました。偽造旅券や偽造書類などの不正行為も、後を絶ちませんでした。

 在任中に日本から多くの来訪者を迎えました。皇族方をはじめ海部俊樹首相、羽田孜外相、宮沢喜一、金丸信両衆院議員、画家の平山郁夫さん、プロ野球の王貞治さんなどを思い出します。長野県出身の羽田外相が訪れた時には、私を含めた長野県出身者が集まり、ホテルでお会いしました。
(聞き書き・船崎邦洋)
(2016年11月5日号掲載)

=写真=タイ訪問中の秋篠宮ご夫妻と(右が私)
 
竹元正美さん