
快晴無風の小春日和に誘われ、11月中旬の日曜日に山仲間と飯山市の小菅山(こすげやま)(1050メートル)に登った。戸隠と並ぶ修験場として知られた小菅神社奥社に参拝し、「女神の森」と呼ばれるブナの美林に目を奪われた。
8時半に長野市を車で出発。飯山市内で千曲川の大関橋を渡って小菅地区へ。小菅神社講堂の前庭に車を置き、歩き始める。
奥社へ向かう参道が登山路だ。うっそうと茂る、樹齢300年余の杉並木の中を進む。足元の大きな石段もこけむしており、歴史を感じさせる。

800メートルほど先で杉並木と石段は終わり、細い山道に入る。「愛染岩(あいぞめいわ)」という大きな岩盤を過ぎ、T字路を右に進んで鎖場を越えると、奥社の下に出た。
懸崖(けんがい)造りの奥社本殿は、室町時代の建築様式を伝える国の重要文化財だ。こんな山奥でも、備え付けの記帳ノートには連日のように参拝者の記入がある。
大休止の後、山頂部へ向かう。急斜面を登ると、登山道の脇に溝を掘った用水路跡が続く。この辺りからブナの木が多くなってきた。
「森香」と名付けられた巨木を過ぎて尾根上の平たん地に出ると、見渡す限り一面のブナ林だ。既に葉は落ち、白いまだら模様が浮き出た木肌が林立している。「女神の森」の命名もうなずける風景だ。
ここから高みを目指して登ると、1046メートルの三角点が現れる。その先の最高地点が、この山の山頂のようだ。ブナ林の真っただ中で展望が利かないため平たん地まで下り、さらに降りた見晴台で昼食にする。
樹間越しに千曲川や飯山の市街が望め、足元には北竜湖が青黒い水をたたえている。気が付くと、今まで見なかったモミや松などの常緑樹も見られる。頭上のブナには宿り木が寄生していた。

ここから下は、すごい急坂が続く。階段が設けられているが、ブナの枯れ葉に埋もれてよく見えない。スリップして転倒しないように、足元に注意して小刻みに下る。
密集している野沢温泉村の旅館街を右に見ながら下っていくと、ブナ林は雑木林に変わり、カエデ類の紅葉が美しい。最後は薄暗い杉林に入り、北竜湖の近くで林道と合流。脇道から湖畔道路を歩き、湖岸から今登ってきた小菅山の紅葉が湖面に映る眺望を楽しむ。
その後、北信五岳を一望できる「いいやま北竜温泉」の露天風呂で汗を流した。好天に恵まれ、晩秋の山歩きを満喫した一日だった。
(横前公行)
=写真1=「女神の森」と呼ばれるブナの美林
=写真2=重要文化財の小菅神社奥社