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091 プラハを巡る ヤン・フス ~国民の理想を象徴する像~

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 プラハの旧市街広場には、天文時計以外にも、たくさんのポイントがある。旧市役所の展望台へは、3つ隣の赤い建物からエレベーターで行ける。ここからの展望も素晴らしい。

 広場の中央にでんと立つのは、ヤン・フス(1370~1415年)の像だ。彼は、腐敗していたカトリック教会を痛烈に批判。プロテスタント運動の先駆けとなった。妥協を許さない彼は、ローマ教会に破門され、公会議により有罪となり火刑に処された。

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 宗教改革といえば、私たちにはドイツのマルチン・ルターが知られるが、ヤン・フスはそのおよそ100年前に登場したパイオニアであった。彼が火刑になった後に、後継者のフス派が続々と登場し、一大勢力になった。その中の27人が同じようにこの広場で処刑された。首が並べられた場所には、今でも白い印が付けられている。

 広場を西へ、ブルタバ川寄りに3、4分歩くと、ベツレヘム礼拝堂がある。フスがチェコ語で聖書の摂理を説いた場所。説教壇は質素だが、座席は大きく、体育館のようだ。私はこの席に座り、入り口で手渡された日本語版の説明書を読みながら、フスの思いや理想を自分なりに想像した。どの世界でもパイオニアはいるものだ。

 かつてローマ教会は乱れていて、必ず問いただそうとする人物が出る。その犠牲によって、カトリック側が襟を正していくことに通じたのだろう。

 現在のチェコ市民に狂信的な信者は少ないが、心の底では忍耐強い。寛容性のある国民で、不遜なところもなく、マナーの良さでは日本と共通点が多い。

 旧市街広場の中央に象徴的に立つフス像は、宗教上のシンボルというよりも、信念を貫き、何事にも屈しないチェコ人の理想を象徴しているかのようにも思える。

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 後に外国からの相次ぐ支配や侵攻に対して、心のよりどころとなり、人々に広まったフスの最期の言葉がある。「真実は勝つ」。
(高校英語講師)
(2017年1月1日号掲載)

=写真1=広場中央にあるヤン・フス像
=写真2=ベツレヘム礼拝堂に飾られているフスの火刑画
 
ヨーロッパ美の旅