
胃がんは日本や韓国など東アジアに多い病気です。消化器外科の分野では、大腸がんに次いで死亡数が多いのが胃がんで、進行がん治療の成績はいまだに良いとはいえず、注意が必要です。
胃がんの手術治療は、その進行度に応じて、開腹手術か、体への負担が小さい腹腔(ふくくう)鏡手術を選択します。腹腔鏡手術は、おなかの中を炭酸ガスでふくらませて、皮膚に開けた小さな穴から腹腔鏡と呼ばれるカメラを挿入し、そのカメラによるビデオ画像を見ながら行う手術です。
体への負担少なく
長野市民病院の外科では、開院から間もない1995年から、早期胃がんを対象に腹腔鏡手術を導入しました。通常の開腹手術に比べて傷が小さいため、痛みが少なく、体への負担が少ないという利点があります。また、腹腔鏡手術は、腹腔鏡のカメラで拡大した画像を見ながら手術を行うことで、緻密な手術が可能となりました。これも大きな利点です。
現在も腹腔鏡手術に対する工夫を続けており、2014年からは完全鏡視下手術を導入し、さらに小さな傷で手術ができるようになりました。内視鏡外科分野では機器の発展もめざましく、3D内視鏡システムも導入しました。腹腔鏡の画像が3D画像で立体的によく見えるようになり、手術の精度がさらに向上しています。
開腹が必要な場合も
このように大きく進歩した手術は、手術による患者さんの負担を確実に小さくしてくれています。しかし、全ての胃がん手術に腹腔鏡手術が適応できるわけではありません。進行した胃がんに対しては、胃がん治療ガイドラインに沿って従来の開腹手術による手術をすることが必要です。
私たちは、これからもさまざまな工夫を行い、胃がん手術がより安全で質の高い手術になるように努力を続けていきます。
(2016年12月10日号掲載)
=写真=佐近雅宏(外科科長・消化器外科科長=専門は消化器~