
整形外科の病気に対し、体を動かすことで病気を治す「運動療法」があります。これは、薬物療法や手術療法などと同じ、治療方法の一つです。
運動療法は、通院が不要でお金がかからない、薬がいらない、自分で治せる―という利点がある一方で、効果が出るまでに時間がかかる、自分でやる気を出して運動を続けないと効果が出ない―という難しさがあります。治るかどうかは、患者さん自身の努力によるのです。
腰椎症などに効果
具体的には、どんな病気に運動療法の効果があるのでしょうか。
私が専門とする脊椎疾患では、「腰椎症」と呼ばれる病態があります。これは、長年の労働や加齢による変化などで、顔にしわが寄るように腰の骨の並びが曲がったり、骨にとげができたりする変化が生じ、その変形した腰骨を動かすことで腰痛が起きるというものです。
この腰痛には、起床時に強く痛み、体を動かすにつれて次第に軽くなってくる、あるいは体を動かそうとする時に痛み、動き始めてしまえば軽くなる、という特徴があります。
このような腰痛があり、腰の神経障害がなく、レントゲンで腰椎に変形があることが分かった患者さんに対しては、腰痛体操などの運動療法を処方しています。
薬やブロック注射などの治療をしないため、患者さんは不満に感じるようですが、診察の結果や病気の状態を丁寧に説明すると、納得する人が多いようです。それでも疑心暗鬼の人には「だまされたと思って運動してみてください」と言っています。
きちんと運動療法を行った患者さんの中には、腰痛の改善を自覚してくる人が多いようです。「痛みがゼロになる」「すぐに良くなる」ということは難しいですが、必ず良くなりますし、仮に痛みが残っても、薬物療法などと比較しても満足度は高い印象です。
このように体を動かすことで改善できる痛みもありますので、まずは皆さんも、毎朝のラジオ体操やウォーキングなどの日常的な運動を始めてみませんか。
そもそも人間は動物です。動物とは字のごとく「動く物」で、動き続けている方が状態を良好に保てることが多いようです。
あなたも「だまされたと思って」運動してみてはどうでしょう。
(2016年12月17日号掲載)
=写真=中村 功(整形外科科長、四肢外傷・機能再建センター科長=専門は脊椎脊髄疾患)