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29 米百俵 ~教育の重要性を説く 演劇公演実現に奔走~

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 ホンジュラスは、中南米でハイチ、ニカラグアに次いで経済的に貧しい国です。なぜ貧しいのか。原因は貧弱な教育にある。教育に十分な投資がなされておらず、学校も先生も教材も不足しており、発展のためには教育が重要である―と思いました。人物さえ出てきたら、この国の将来は明るい...。日本の長岡藩の故事である「米百俵」の精神が、ホンジュラスには必要と思いました。

 「米百俵」の故事とは、戊辰戦争に敗れ窮状にあえぐ長岡藩(現在の新潟県長岡市)の城下に、支藩の三根山藩(同新潟市)から救援米100俵が贈られてきた。藩士たちは米が食べられると喜んだが、大参事の小林虎三郎は藩士たちを説得し、米を配らず、売却したお金を教育のために使ったという話です。

「最高の贈り物」に
 山本有三が戯曲「米百俵」を書き、2001(平成13)年5月に小泉純一郎首相が所信表明演説で紹介したことで知られています。

 私は大統領選挙に当選したマドゥーロ氏に、日本が経験したことを話しました。(1)ボーイズ・ビ・アンビシャス(若者たちが夢を持つこと)(2)所得倍増計画(リーダーの重要性)(3)米百俵の精神(教育の重要性)―の三つです。

 マドゥーロ氏は「とてもいい話である。特に米百俵の話はホンジュラス国内に広めてほしい」と言いました。また、バトレス文化相も「国立演劇学校で演劇にしたい」と喜び、戯曲「米百俵」のドナルド・キーンによる英訳版をスペイン語に訳しました。

 私は著作権の問題解決や日本からの寄付、京都の劇団「すわらじ劇園」代表の木村進次さんに演技指導に来てもらうなど、公演のために奔走しました。

 多くの皆さんの協力が得られ、03年5月に国立劇場で行われた初演は大成功。その後各地で公演し、紀宮さま、森民夫長岡市長、宇宙飛行士の向井千秋さんも観劇しました。

 ホンジュラス側からは、日本からの最高の贈り物、わが国が最も必要としている教育の重要性を伝えてくれた、との声が上がりました。後日、主役を務めたホセ・ルイスさんは、半年間京都のすわらじ劇園で研修しました。

 7月18日付の日本経済新聞文化欄に、私が書いた米百俵の話が載りました。この記事が日の出出版の中島太郎さん(長岡市出身)の目にとまり、単行本「米百俵 海を渡る」が出版されました。向井さんが本の帯を書いてくれました。

学校100校が完成
 米百俵の演劇は、中米の隣国やアジアのバングラデシュでも上演されました。舞台の図柄は、05年の日本・中米交流70周年記念切手の一つになっています。

 私はさらに、ホンジュラスに米百俵学校を100校つくろうと、マドゥーロ大統領に提案。日本政府の協力で「米百俵学校100校プロジェクト」がスタートしました。そして、今年2月にホンジュラスで100校完成記念式典が行われました。

 式典に出席したゲバラ大統領代行は「米百俵の逸話の中でも語られているように、教育は国の発展に重要である。この計画は竹元大使から岡田憲治大使まで引き継がれ、100校に到達することができた。日本国政府に感謝する」と述べました。現在、米百俵学校の生徒数は約2万5千人になるとのことです。
(聞き書き・船崎邦洋)
(2016年12月24日号掲載)

=写真=「米百俵」の舞台(国立劇場での初演)
 
竹元正美さん