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090 プラハを巡る ~旧市街広場 毎正時に人が群がる時計塔~

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 チェコの首都プラハを巡る3つ目の核は、旧市街地だ。カレル橋からブルタバ(ドイツ語でモルダウ)川右岸を東に進むと、程なく美しい建築群が現れ、旧市街広場に出る。

 ヤン・フス像を中央に、ティーン教会やキンスキー宮殿、さらにモーツァルトとの関わりが深く、バロック芸術の粋を集めた聖ミクラーシュ教会の一つなど、プラハの心臓部でもある。建物にはゴシック様式やルネッサンス様式、バロック様式など、あらゆる時代の建築が網羅され、さながら一大建築展示場の感がある。

 ここでの人気は旧市庁舎の天文時計だろう。観光ガイドブックには必ず紹介される代物である。それは毎正時になると、人が群れる。死に神の鐘を皮切りに上部の二つの窓が開き、各6体、合計12体の像が顔見せするのだ。

 右の窓には鍵を持つペテロ、そして(斧)(おの)のマタイと続く。左窓は本を携えるユダからX字の十字架を持つアンドレ。右の窓と対になって登場する。最後は最上部のおんどりの「コケコッコー」で終了。ほんの2,3分であっという間だ。最下部にはカレンダー式文字盤(カレンデウム)があり、季節ごとの農業の手順を表す。

 「プラハの天文時計」と呼ばれるこのお宝は、まだ天動説が信じられていた15世紀初めの製作だ。上下の文字盤がある貴重な品で、「動く空の図」とも言われ、太陽と月、そしてゾディアックと呼ばれる獣帯の星座(12宮)の位置を知らせる貴重な情報源だった。

 地動説の今日では、直接参考にはならないものの、当時の市民はこれによって、日の出や日の入りなどを参考にしていた。製作した大学の天文学教授ヤン・シンデルの計算で、時計作りの親方ミクラーシュが完成させた。しかし、他でまねされないようにと、親方の目をつぶされるという悲しい逸話も残る。

 毎正時、大勢が集まる時計塔の下とは別に、向かいのホテル2階に絶好の場所がある。「カフェ・モーツァルト」。隠れた絶景ポイントである。コーヒーと豆のスープをすすりながら、私はつかの間の幸せを味わった。
(2016年12月17日号掲載)

=写真=旧市庁舎の天文時計
 
ヨーロッパ美の旅