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32 ウルグアイ ~世界一貧しい大統領 ムヒカさんとランチ~

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 2007(平成19)年4月、南米のウルグアイ大使に任命されました。ホンジュラス大使任命の時と同じく、宮殿での認証式や関係先へのあいさつなど、赴任前は慌ただしい毎日でしたが、村田良平元外務事務次官は「ウルグアイは中南米でいちばんいい国だよ」と言ってくれました。

 ウルグアイへは、ニューヨーク経由のJAL直行便でブラジルのサンパウロへ。そこで乗り換えて首都モンテビデオに降り立ち、空港から車で10分ほどの高級住宅地区にある大使公邸に着きました。

 ウルグアイは日本のほぼ反対側に位置しています。ブラジルとアルゼンチンに挟まれ、面積は日本の約半分、人口は337万人です。

巡回バスを供与
 民族は欧州系90%、混血8%、アフリカ系2%。紛争が絶えない欧州から平和を求めて移住した人が多い白人国家です。人種や宗教の対立がなく、早くから福祉国家として裕福な国でした。内外無差別で、貧富の差も少ないですね。

 村上春樹さんの小説「ノルウェイの森」には、ウルグアイが日本での苦難や煩わしさから解放されて、平和に、平穏に暮らせる所といったイメージで語られています。

 南東は海、西はラプラタ川。空気がきれいで、マスクをする習慣がありません。中南米で最も古く、由緒あるソリス劇場でコンサートが開かれた時のこと。観客席でマスクを着けた日本人を見た外務次官から、「あれは何だ」と驚いた顔で質問されたことがあります。

 日本とは友好関係が続いており、大使館としては、医療、衛生、教育、貧困対策などの協力をしていました。その一つが巡回バスの供与です。バスで各地を回り、行政や医療のサービスを行って遠隔地の住民から喜ばれました。私は在任中に国内をくまなく訪問し、日本の協力の実情を視察するとともに、関係者と意見を交換しました。

 ウルグアイといえば「世界でいちばん貧しい大統領」といわれるホセ・ムヒカさんが知られています。私の赴任当時は農牧水産相でしたが、その後大統領に就任。このムヒカさんからランチに招待されました。アサード(焼き肉)と「タナット」種の赤ワインのランチでした。

ギネス認定焼き肉
 ムヒカさんはネクタイを締めないし、質素な生活をしていました。貧困層の味方で、大統領の給料の90%を福祉関係に寄付。国連の会議で大量消費社会に警鐘を鳴らし、日本でもムヒカさんの本が何冊も出版されました。「私たちは幸せになるために生まれてきた」という言葉が印象的です。16年春に日本を訪問。民放のテレビ番組では、私もコメンテーターとして出演しました。

 ウルグアイは世界6位の牛肉輸出国です。私は食肉協会幹部と話した際、ウルグアイの牛肉を広報するために世界一の焼き肉大会を開いたらと提案しました。その後、この話が実現しました。長さ1500メートルの網、12トンの牛肉。この焼き肉大会はギネスブックで認定されました。

 ウルグアイの多くの人が南米特産のマテ茶を飲みます。容器にマテ茶を入れ、お湯を随時注いで、ボンビージャというストローで飲みます。日本茶より色、味ともに濃く、私もよく飲みました。
(聞き書き・船崎邦洋)
(2017年1月21日号)

=写真=ムヒカさん(右端)と夫人らと食事(左端が私)
 
竹元正美さん