
脳梗塞は脳卒中の一つで、脳の血管が詰まって酸欠状態となり、脳の機能に障害が出る病気です。脳梗塞では次のような症状が突然、出現します。
(1)片側の手足や顔半分にまひ・しびれが起こる
(2)ろれつが回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解できない
(3)片方の目が見えない、視野の半分が欠ける
一度、脳梗塞にかかってしまうと、6割の患者さんに後遺症が残り、寝たきりとなってしまうことも少なくありません。ただ、発症から間もない超急性期の段階で適切な治療を行うことで、後遺症がなくなったり、軽くなったりすることも多くあります。
血栓を溶かす薬で
長野市民病院は2015年に脳卒中センターを開設し、高度で専門的な脳梗塞治療を行っています。
脳梗塞を発症してからすぐなら、血管に詰まった血栓を溶かす薬「t―PA」による治療をします。「t―PA」が投与できるのは発症4時間半以内と決められています。この時間内に搬送されたものの、検査に時間がかかったために投与できない場合もあります。当院では「t―PA」治療までにかかる時間を短縮する工夫を積み重ね、全国平均の2倍近い患者さんに投与しています。
「t―PA」を投与しても血流が再開通しない場合や、何らかの理由で「t―PA」が使えない場合には、発症から6時間以内であれば、カテーテル治療を行うことがあります。「ステントリトリーバー」という網目状の金属の筒を血管内に入れ、血栓(せん)を絡め取って回収する治療法です。
体を切開する必要がなく、8割以上の高い確率で血栓を取り除くことができる、新しく優れた治療法です。専門的な治療のため、限られた施設でのみ実施されているのが現状です。
少しでも早く受診を
当院での脳卒中治療は、脳卒中センター内にある「ストロークケアユニット(SCU)」で行っています。SCUで治療をすると、入院中の死亡率が低くなり、入院日数が短縮する、自宅へ戻る可能性が高い―などの利点があります。
患者さん1人に対する看護師数は一般の病棟の2倍以上で、よりきめ細かな看護を提供することができます。
脳梗塞が疑われる場合には、1分1秒でも早く、脳卒中センターを受診してください。
(2017年2月4日号掲載)
=写真=草野 義和(脳血管内治療科部長、脳卒中センター長=専門は脳血管障害、脳血管内治療、脳神経外科)