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095 プラハを巡る ~2人の作家 インテリと素朴なユーモア~

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 チェコの作家といえば、「変身」「城」などのフランツ・カフカ(1883~1924年)が有名だ。だが、ドイツ語で書いたため、チェコではあまり好まれてはいない。これに対して、国民に愛され続けてきたのが、カレル・チャペック(1890~1938年)とハシェク(1883~1923年)の2人である。

 チャペックの出世作は戯曲「R・U・R」。この中で、科学の進歩は人間を不幸にするという視点から、ロボットという言葉をつくり出した。チャプリンの映画「モダン・タイムス」にもつながっていく。

 SF小説「山椒魚戦争」ではナチスを批判して、後に発禁処分に。ゲシュタポが逮捕に向かった時は、肺炎で他界した後だった。

 ジャーナリスト出身らしく表現は簡潔である。多趣味で筆は多岐にわたる。英人気作家ピーター・メイルのベストセラー「南仏プロヴァンスの12か月」も、チャペックの「園芸家12か月」からの着想といわれている。

 私が泊まったホテルの近くに平和広場があり、毎日ここを横切った。広場の一角にチャペックと、挿絵を描いた兄ヨゼフのオブジェがある。童話「長い長いお医者さんの話」や子犬の生活を題材にした「ダーシェンカ」で子どもにも人気がある。

 一方、ハシェクはチェコ人が好きなユーモアのセンスを受け継ぐ。代表作「兵士シュヴェイクの冒険」シリーズは、かつての支配者ハプスブルク家やその片棒を担いでいた上官兵士の融通の無さに、とぼけたキャラクターで対応するシュヴェイクに、国民は快哉(かいさい)を叫ぶ。どこに行っても、レストランや土産物店にシュヴェイクの挿絵や人形があった。

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 ハシェクが足しげく通ったという居酒屋「ウ・カリハ」に入ってみた。人形や挿
絵などの落書きが店の壁にびっしり。それを目当てに来る観光客も多い。にぎわうシーズンには、シュヴェイクに扮装(ふんそう)したスタッフがアコーディオンを弾いて歌いながら客席を回るのが人気だという。国立美術館にも大きな挿絵のコーナーがある。

 宿泊したホテルのフロント係、ビクトリアさんは「インテリのチャペックに対し、ハシェクはシュヴェイクから分かるように、素朴でユーモラスで庶民的なの。だからチェコ国民の生活に根付いているのだと思う」と話してくれた。
(2017年3月4日号掲載)

=写真=兵士シュヴェイクの挿絵。街のあちこちにある
 
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