107 前立腺がん ~進行具合で治療選択 精密なロボット手術~

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 長野市民病院は、がんの診療態勢を強化しており、中でも、前立腺がんの治療には力を入れて取り組んできました。今回は前立腺がんの診療について紹介します。

 前立腺がんの診断は、健診やドックでの腫瘍マーカー(PSA)測定で行い、肛門から指を入れる直腸診で前立腺の硬さや表面の凹凸を確認します。

 確定診断は組織検査によって行います。会陰部に針を刺して前立腺の細胞を採取し、病理部の医師が専門的に調べます。

 前立腺がんと確定したら、がんの進行度を画像検査で確認します。胸腹部CTで他臓器への転移やリンパ節への転移がないか、骨シンチグラフィーで全身への骨転移がないかを調べます。

 根治的治療
 前立腺がんは進行具合や悪性度によって、選択できる治療方法が変わります。がん組織が前立腺内にとどまり、転移がない場合は、手術や放射線療法といった根治的治療が可能です。

 手術による根治的前立腺摘除では、ダ・ヴィンチと呼ばれるロボットを使っています。手術する場所を拡大して見ながら、精密な手術が可能な装置です。

 従来の開腹手術と比べて出血量が少なく、傷も小さいため、術後の痛みも軽く済みます。術後の主な合併症は勃起不全と尿失禁ですが、従来の手術より機能が温存されることが期待できます。入院期間は10日間です。

 放射線療法は、根治的治療として体外から放射線を当てる方法と、組織内照射があります。組織内照射は、ヨウ素125を封入したカプセルを前立腺に埋め込む「小線源治療」、悪性度の高いがんに対する「高線量率小線源治療」があります。組織内照射は治療効率が高く、副作用を減らすことができます。主な合併症は排尿困難です。
 
全身への薬物療法
 転移がある場合には、全身に作用する薬物療法を行います。前立腺がんは男性ホルモンで増殖する特徴があります。そのため、薬物療法は、体内で作られる男性ホルモンを抑え、前立腺がんの増殖を抑える治療です。副作用には更年期症状や女性化乳房、肝機能障害などがあります。

 治療は、患者さんの症状に合う最適な治療をじっくり相談した上で、こうしたさまざまな方法を組み合わせて行います。詳しくは気軽に泌尿器科医師に相談してください。
(2017年3月11日号掲載)

=写真=下島雄治(泌尿器科医長=専門は泌尿器科一般) 
 
知っておきたい医療の知識