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21 坂城 ~村上義清と坂木宿の町 至る所に製造業の工場

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 坂城町は北信地域の南端。江戸時代は幕府領と松代藩領だった。北国街道の宿場町であり、今は製造業の町だ。

 坂城駅近くには、工具など製造のアルプスツールの工場がある。この町の工業化は1941(昭和16)年、同社が宮野鑢(やすり)製造所として坂城に工場を造ったところから始まった。

 戦時中に東京などの製造業の工場が相次いでここへ疎開。戦後、これら大工場から独立する企業で工場はさらに
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増えた。今、同町の製造品出荷額は年間約1800億円で、県内町村でトップ。町内を歩くと工場の多さを実感する。

 坂木宿は、現在の坂城駅を中心に、4つの直角カーブ(かぎの手)がある約1キロの区間。多い時には旅籠(はたご)など100軒以上の建物が並んでいたという。本陣の宮原家があった場所は今、「坂木宿ふるさと歴史館」になっている。坂木宿の歴史や、江戸時代にこの地で盛んだった和算に関する展示がある。

 近くにある「鉄の展示館」は、同町が生んだ刀鍛冶の人間国宝(重要無形文化財保持者)、宮入行平さん(1913~77年)の業績を紹介している。

 宮入さんは「町の鍛冶屋」の3代目だったが、刀鍛冶を志し、親の反対を振り切って上京。多くの賞を受けるまでになったが、戦後、連合国軍総司令部(GHQ)の占領時代は刀剣製作が禁止され、坂城に戻って農具を作った。同館には、後の人間国宝が鍛え、よく切れると評判だったという、なたやおのも展示されている。

 「ふるさと歴史館」と「鉄の展示館」では4月2日(日)まで、ひな人形の企画展が開かれている。享保(きょうほう)びなから昭和のひな人形、つるしびななどが飾られ、華やかだ。
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 宿場町の上田寄りの外れに、戦国武将村上義清の供養塔がある。この地を治め、甲斐から攻めてきた武田信玄を2度撃退した義清は、坂城のヒーローだ。供養塔は江戸時代、やはり坂城を本拠とした出浦氏の屋敷地に立てられた。出浦氏は、出浦盛清(昌相)がNHK大河ドラマ「真田丸」にも登場していた。盛清は初め村上氏に臣従し、義清が上杉氏を頼って越後へ逃れると武田氏につき、真田昌幸・信之父子に仕えたという。

 国道18号沿い、テクノさかき駅近くの「地場産直売所あいさい」では、この周辺で作られる辛味大根「なかんじょ(中之条)大根」を求めた。この日は買えたが、直売所の女性によると「お客さんはラッキー」。辛味大根の時季はそろそろ終わりで、次は晩秋の11月ごろに並ぶという。
(竹内大介)
(2017年3月11日号掲載)

=写真1=「坂木宿ふるさと歴史館」の入り口にある、本陣宮原家の表門
=写真2=宮入行平さんが作り、地元農家で使われたおの
 
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