109 鼻血 ~局所的か全身的か まず落ち着いて対処~

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 鼻血はありふれた疾患ですが、血が止まらないと強い不安を覚えたり、頻繁に出血するとQOL(生活の質)が大きく損なわれたりします。程度も、鼻をかむとティッシュペーパーにつく程度のものから、流れ出てくるものまでさまざまです。出血する場所は、7割以上が鼻の入り口から1~2センチほど奥の所です。

内視鏡で観察する
 原因は、局所的なものと、全身的なものに分けられます。局所的な鼻血の原因となるのは、副鼻腔(びくう)炎(蓄膿(ちくのう)症)、アレルギー性鼻炎、腫瘍、鼻中隔湾曲症(左右の鼻のしきりが曲がる病気)、外傷などです。全身的な原因としては、高血圧、血液疾患、肝疾患、妊娠、心筋梗塞や脳梗塞の薬の服用などがあります。

 治療は、痛み止めで処置をした後に、ガーゼを鼻内に入れて止血する方法や、出血した部位を電気焼灼(しょうしゃく)する方法などがあります。以前は、出血点を肉眼で確認していましたが、鼻の奥を直接見ることは困難でした。最近は、内視鏡で鼻の中を観察できるようになり、出血点を確認した後に、内視鏡を使いながらガーゼを詰める処置や電気焼灼を行っています。

家庭での応急手当
 家庭などで鼻血が出たら、次のように対処してください。
 (1)まず落ち着くこと。血圧が平常に戻り、止血しやすくなります。

 (2)楽な姿勢で座って少し前かがみになり、喉の方に回った血液を、飲まずに吐き出すこと。洗面器などを受け皿にすれば、周りを汚さなくて済みます。

 (3)ティッシュペーパーを小指の先くらいに丸めて鼻栓を作り、鼻にきつめに詰め、小鼻(鼻の柔らかい所)を指で強くつまみます。少なくとも5分以上つまみましょう。

 (4)鼻血が止まっても、鼻栓はすぐに取らずに、2時間ほどそのままにしておきましょう。

 (5)気分が悪くなった場合は、頭を高くし、横向きになって休むこと。喉に回った血液は飲まずに吐き出します。あおむけになると、血が喉に流れてせき込んだり、飲み込んで気持ちが悪くなり、吐いてしまったりすることがあります。

 鼻血には、血液に唾液や鼻汁が混じりますので、実際の出血量は見かけより少ないものです。静かに様子をみて、それでも出血が止まらず、喉の方にたくさん流れてくるようでしたら、医療機関へ連絡してください。
(2017年4月15日号掲載)

=写真=大塚  明弘(耳鼻いんこう科部長=専門は耳鼻いんこう科)
 
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