
春を待ちわびて3月末の土曜日、山仲間たちと新潟市の角田山(かくだやま)(482メートル)に出掛けた。弥彦連山の北端に位置するこの山は、海岸沿いの低山ながら「花の百名山」として知られ、この時季は雪割草が楽しめる。
7時に長野市内を出発。須坂長野東インターから上信越道を北上。新潟県上越市で北陸道に入り、巻潟東インターから日本海の角田岬へ向かう。
海水浴場もある砂浜の広い駐車場には、既に百台以上の車が。ほとんどが「新潟」「長岡」ナンバーだ。早春の花を見るため、地元の人たちが大勢訪れているようだ。

当初は灯台コースを往復する予定だったが、近くの名のないコースの方が花は多いと聞き、10時過ぎにそちらから登り始める。波の音を背に急坂を登っていくと、登山道の両脇の斜面にかれんなオオミスミソウの群落が次々に現れる。
白、ピンク、青、紫と、この花は株によって色が異なり、多彩な姿が楽しめる。雪解け後、真っ先に咲くことから、新潟では「雪割草」と呼んでいる。
途中、このコースを管理しているおじさんから、手にしていたストックの先にゴムカバーが着いていないのを見とがめられ、きつく叱られた。これだけの群落を維持するには、苦労も多いはずだ。
尾根筋に達すると、アップダウンはあるが、雑木林の中に快適な道が続く。オオミスミソウが少なくなると、赤紫色のカタクリやショウジョウバカマ、白いアズマイチゲなどが見られるようになった。
この山のもう一つの目玉、カタクリはまだつぼみが多かったものの、場所によっては群れを成して咲いていた。最盛期には、さぞ見事なことだろう。
上部で灯台コースと合流すると、頂上はすぐそこ。広い山頂部では大勢の登山者が弁当を広げていた。我々は山頂から少し先の観音堂まで行き、広大な越後平野を見下ろしながら昼食にする。遠くに真っ白な朝日・飯豊(いいで)連峰が望めた。

帰りは灯台コースを下る。木道が続いた三望平(さんぼうだいら)で一休みし、梨ノ木平まで急な階段を下りる。このコースは花が少ないなと思っていたが、よく見ると左右にカタクリがあり、咲き乱れる群生地も。そこから下は岩場になり、西側に転落防止用の鎖の柵がある。転ばないように足を運ぶ。
岩場を過ぎると、眼下に終着点となる白い灯台が見える。今度は海に向かって落ち込むような下りだ=写真下。海に目を向けると、眼前に大きな佐渡島が横たわっている。
灯台まで降り、海をたっぷり眺めて帰路に。「春の妖精」のような花々を見て、新潟の山ならではの海の景色も楽しんだ一日だった。
(2017年4月8日号掲載)
=写真=至る所に咲き誇るオオミスミソウ