
カルチャー教室の里山講座で、4月下旬の土曜日に松代町の尼厳山(あまかざりやま)(781メートル)と奇妙山(きみょうざん)(1100メートル)に登った。尾根続きの二つの山は10年ほど前、別々に登ったことがあったが、一度に登るのは初めてだ。低木類の芽吹きや、素晴らしい眺望を楽しんだ。
松代町東条の玉依比売命(たまよりひめのみこと)神社の脇から、天王山コースで尼厳山へ登る。歩き始めてすぐ、獣よけの金網の扉が現れた。自分たちでかんぬきを外し、全員が通ってから閉める。人間たちが逆に、おりに入るような感覚だ。

雑木林の中を、枯れ葉を踏みしめながらジグザグに登る。足元に時折、薄紫のスミレの花が見られ、ツツジ類には新芽が出ている。
間もなく、上部を取り巻く岩壁帯に。見上げるような岩場には、割れ目に沿って岩登り用の金具が打ち込まれている。クライミングの場にしているのだ。
山頂直下からは、ぽっかりと浮かぶような皆神山と、一面にアンズ畑が広がる東条地区を見下ろせる=写真下。
山頂からは北側に長野市街地を一望。蛇行する千曲川の向こうに犀川が流れ、その先にビルが林立する。正面に雪の残る飯縄山や戸隠連峰がそびえる。
中世の山城跡だった山頂で大休止し、次の奇妙山へ向かう。ロープを使いながら急斜面を下り、小ピークを越えると鞍部(あんぶ)に着く。ここで一休みした後、奇妙山への上りにかかる。
うっそうとした杉林を抜け、農業大学校から登ってくるコースと合流する「出会いの石」に。名前の通り、分岐に大きな石がある。
さらに登ると、このコースで最も見晴らしのよい展望スポット「高見岩に。眼下に尼厳山を見下ろし、その先に善光寺平の南部が広がる。晴れていれば、残雪の北アルプスも望める。
ここを過ぎ、頂上へ向かうころから急に冷え込んできた。寒気の影響か北風が強くなり、帽子も飛ばされそうなほどだ。天気予報では好天のはずだったが、さすがに山の天気は変わりやすい。
登り着いた山頂には、自然石に文字を刻んだ数基の碑と石の祠(ほこら)が。北側からは尼厳山よりさらに高い位置から長野市街地が望めるはずだが、曇っていて視界が利かない。防寒のため雨具を着込み、大急ぎで昼食を取り、早々に来た道を下る。

鞍部から南側の岩沢地区へ下っていくと、緑が濃くなる。途中でカミソリの刃のような形をした葉が茂るキツネノカミソリという毒草を見かけた。南斜面は風もなく暖かい。
下山口でも獣よけの金網の扉を開け閉めし、アンズ畑の中を玉依比売命神社まで歩く。名残のアンズの花に満開の桜や桃の花が出迎えてくれた。帰路、松代荘の温泉で冷え切った体を温めた。
(2017年5月13日号掲載)
=写真=尼厳山頂から長野市街地を望む