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099 チェコの地方巡り クトナー・ホラ ~鉱山労働者をたたえる教会~

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 13世紀後半、銀鉱脈が発見されて田舎町は活気づいた。クトナー・ホラは、チェコの首都プラハから東へ、およそ65キロの所にある。当時、銀の産出量はヨーロッパの3分の1を占めた。

 銀食器などは、王侯貴族らにとって垂ぜんの的。クトナー・ホラが「ボヘミア王国の宝庫」と言われた由縁でもある。14世紀にはボヘミア王バーツラフ2世により王立造幣局が設けられ、通貨製造を一手に担った。クトナー・ホラはドイツ語とチェコ語の造語で「採掘と鉱山のある山」の意味だ。
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 ところが、16世紀になると、その銀が枯渇し衰退。30年戦争を機に18世紀には造幣局も閉鎖された。クトナー・ホラは歴史の栄枯盛衰を示す街だ。

 この街にある重要建造物の中で特筆すべきは、世界遺産でもある聖バルボラ教会だ。市民らの寄付で建築された。ゴシック様式の大聖堂としては、チェコ国内で最大だという。200年の歳月を費やし、16世紀に完成。屋根に突き出た黒い尖塔(せんとう)が半開きのこうもり傘のようでもある。

 大聖堂内陣の中央祭壇に、鉱山労働者の守り神で聖女のバルボラをまつっている。世界に大聖堂は数々あれど、銀鉱山で働く人たちの安全のための聖堂はまれだ。白い服を着てカンテラをかざす男の像が中央の柱にある。暗い坑内では、お互いに確認しやすい白い作業着がユニホームだった。

 奥の左手には、銀貨の製造工程を描いた男や作業をする女たちのフレスコ画。ステンドグラスには、名も無き人々の姿も描かれていて、好感がもてた。

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 私が訪れた時、一緒だったイタリアの高校団体客は20分ほどで立ち去った。けれども、わざわざこれを見にきた私は、おいそれと退出したくはなかった。長椅子に座って売店で入手した解説書を読みながら、この国の繁栄を支えた人々の苦労に思いをはせ、庶民をたたえるこの大聖堂に、心の中で拍手を送った。

 大聖堂のすぐ下には銀鉱山の博物館もあり、その繁栄と鉱山労働者たちの労苦をしのぶことができる。
(2017年6月3日号)

=写真1=世界遺産の聖バルボラ教会
=写真2=作業をする女性を描いた壁画
 
ヨーロッパ美の旅