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101 チェコの地方巡り カレルシュテイン城 ~技術の粋を集めた宝庫へ~

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 「千年の都」プラハの南西へ25キロ。駅前には何もないほどの田舎町は、シーズンになると、観光客が大挙して押し寄せる。たった一つの城が目当てだ。タクシーもバスもなく、馬車はあるものの、高価なので、多くの人たちは30分ほど歩き、小高い丘に向かう。

 村の中心部に入るや、左手に仰ぎ見る黒い屋根の城に歓声が上がる。神聖ローマ帝国のカレル4世に由来する壮麗なカレルシュテイン城である=写真。

 そこまで観光客を引き付けるのは何かというと、国王が重要文書や宝物を保管し、当時の技術水準の粋を集めた宝庫だったからだ。例えば、チェコ建国の祖・聖バーツラフ1世の王冠や、宝玉のカメオのほか、キリストの十字架の遺蹟などを収めている。
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 城内で特筆すべきは、国王が長時間瞑想(めいそう)していたと言われる聖カタジナ礼拝堂。14世紀以前から、壁は宝石で飾られている。チェコ国内でこうした例は3カ所だけだ。また、聖十字架礼拝堂には、キリスト降誕に駆け付けた「東方の3博士(賢人)」の壁画が張り出し窓にあり、その1人がカレル4世そのものと言われている。

 今はプラハ城やオーストリア・ウイーンの宝物館で保管されている物があるけれども、そのたたずまいに魅了される人々は、チェコのみならず、近隣の国にも多い。見学ツアーは、英語かフランス語、チェコ語だ。

 私が参加した英語のツアーを、一人で待っている女性がいた。無礼を承知でどきどきしながら、「あまりにきれいなので、写真を撮らせてもらえませんか。女優さんですか」と話し掛けてみた。

 「結構ですよ」との返事。「普通の仕事」というが、歌手かと聞かれたこともあるとか。スロバキアの人だったが、米オハイオ州に2年いて、日本にも半年いたという。失礼のないように、3回ほどシャッターを切った。
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 英語のクイズやジョークで談笑した。黒いベレー帽と赤いコート、そして大きめのマフラー。すてきなコーディネートに、「これぞ『美の旅』の延長だ」と、一人で納得した。別れて城を去っていく姿も絵になっていた。
(2017年6月17日号掲載)

=写真2=城で出会ったスロバキアの女性
 
ヨーロッパ美の旅