111 腹部超音波検査 ~被ばくの心配がない 病気早期発見に期待~

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 腹部の超音波検査は、内臓の状態を画像化して観察することができるので、自覚症状がない病気を早期に発見することが期待できます。

 超音波検査では、皮膚に超音波を送受信する機械(探触子)を当てます。内臓から返ってくる超音波の反射を探触子で受信して電気信号に変換し、モニターに白黒画像として表示します。きれいな画像を得るために、皮膚にゼリーを塗り、探触子を押し付けながら動かしていきます。

 臓器それぞれを観察
 観察する範囲は、上腹部の臓器と骨盤部です。検査時間は、個々の臓器をそれぞれ観察して病気を探すので、10分程度かかります。

 腹部を画像化する検査としては、ほかにエックス線写真やコンピューター断層撮影(CT)がありますが、超音波検査はこれらと違って放射線を使わないので、被ばくの心配がありません。

 検査の際は、ズボンやスカートを腰の骨の位置まで下げ、おなかを広く出してもらいます。検査台にあおむけに寝て、両手を頭の方に上げて手枕をした姿勢を取ります。

 超音波検査では、腹部内に空気が多くあると、画像がよく見えません。食事の後は、消化管内に空気が発生しやすいため、絶食の状態で行います。また、ぼうこうを検査する場合は、尿がたまっている方が詳しく観察できるので、検査前の排尿はがまんしてもらいます。

結石や脂肪肝も
 腹部超音波検査では、肝臓、胆のう、膵臓(すいぞう)、腎臓の腫瘍や炎症などが分かります。胆のうや腎臓などにできた結石も見つけることができます。

 脂肪肝も観察できます。脂肪肝は、肝臓に脂肪が過剰に蓄積した状態で、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病との関係が指摘されています。肝硬変や肝細胞がんに発展する可能性があるので、早期に発見し、生活習慣を改善することが大事な病態です。

 超音波が入りにくい場所は観察できないという欠点がありますが、ほかにも多くの病気を見つけることができます。

 厚生労働省の受療行動調査によると、悪性新生物(がん)と診断された外来患者のうち4割の人が「自覚症状がなかった」と回答しています。がんは自覚症状が現れてからでは治癒が難しい病気ですので、早期に発見して治療することが重要です。

 超音波検査は、ほかの画像検査と比べ、簡便に受けることができるのが利点です。
(2017年6月3日号掲載)

=写真=蒔田 博人(診療技術部 診療放射線科主任=診療放射線技師)
 
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