112 破傷風 ~最悪の場合は死亡も 予防接種が最も有効~

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 破傷風は、土などの中に存在する破傷風菌が傷口から体内に入り、感染する病気です。破傷風菌が作り出す毒素が、神経障害症状を引き起こします。

非常に高い致命率
 症状は感染後すぐには出ませんが、3日から3週間ほどたつと口を開けにくい、首筋が張る、体が痛いなどの症状が現れます。全身のけいれんが起きることもあり、最悪の場合、呼吸ができなくなり死亡する例もあります。致命率(致死率)は20~40%と非常に高いです。

 治療は、血清や抗菌薬の投与、傷口の治療、呼吸管理などで、入院しての治療となります。人工呼吸管理を必要とすることも珍しくありません。

 発症してしまうと、治療には困難を伴うことが多いので、予防が重要です。

 最も有効なのは予防接種です。正しい方法で接種を行うと、免疫が約10年間持続します。接種は3回行います。1回目は受傷の直後、2回目は受傷後3~8週間の間、3回目は12~18カ月の間に行います。

年間80~120件発症
 破傷風の日本全体での発症件数は、毎年80~120件ほどです。47都道府県で平均すると、1県では年間2~3件しか発症しないはずです。しかし、当院だけで年間1~2人の患者が破傷風にかかり、入院治療をしています。

 このことから、長野県の土壌には破傷風菌がいる頻度が高いのではないかと推察されます。けがをしてしまったら、予防接種を受けましょう。破傷風の予防接種は当院でも行っていますし、開業医でも行われています。気軽に相談してください。
(2017年6月10日号掲載)

=写真=片山 延哉(救急科医師 救急センター医師=専門は救急科)
 
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