
カルチャースクール「里山講座」の会員と5月最後の土曜日に、駒ケ根市と伊那市境の戸倉山(とぐらさん)(1681㍍)に登った。
中央アルプスと南アルプスの間に連なる伊那山脈にある戸倉山は「伊那富士」と呼ばれる。箕輪町方面から眺めると、富士山のような姿に見えるからだ。中アと南アの眺望が素晴らしく、晴れた日は北アルプスも遠望できる。
長野市を7時に中型バスで出発。中央道駒ケ根インターを

出て登山口へ向かう。天竜川の対岸の山中にある戸倉山キャンプ場から登り始める。
前日までの雨は上がり、天気は上々だ。薄暗いヒノキ林の中の急斜面にジグザグに切られた登山道を上る。やがて広葉樹林に入ると、柔らかな若葉の間から木漏れ日が差し込み、まるで緑のシャワーを浴びているようだ。
コース中ほどの展望ベンチから、中ア南部がよく見える。15年ほど前の夏に縦走した空木岳から南駒ケ岳、仙涯嶺(せんがいれい)、越百山(こすもやま)にかけての稜線(りょうせん)付近はまだ残雪で白い。
さらに上ると、あずまやが現れる。梁(はり)に大鍋をぶら下げてあり、近くで火をたけるように木の枝も集めてある。すぐ脇の「金明水」という水場は枯れていたが、クリンソウが2株、赤い花を付けていた。
ここから急な尾根を登り詰めると、2つある山頂のうち西峰に飛び出す。古びた石碑や不動明王の石像などが並ぶ。西側に目を向けると、千畳敷カールや宝剣岳、木曽駒ケ岳も見え、南北に連なる中アが一望できる。
さらに北方に、どっしりとした乗鞍岳。その先に、かすみがちではあるものの、槍・穂高連峰も見え、背後の南アと合わせ、同時に3つのアルプスを望むことができる。
西峰から尾根を下り、わずかに上り返した東峰からは、甲斐駒ケ岳、仙丈ケ岳、北岳、間ノ岳(あいのだけ)など三千メートル級の南アの高峰が間近に迫る。中アの山々より雪解けが進み、緑が濃さを増している。
薬師如来の石像のある東峰上で昼食を取り、さらに東南のピークへ南アの展望を見に行く。正面に仙丈ケ岳を仰ぎ=写真下、谷底を見下ろすと、三峰川(みぶがわ)が流れている。その先に美和ダムがせき止めたダム湖が見え、旧長谷村の集落が点在している。

帰路は再び西峰に戻り、3つのアルプスの眺めを堪能した後、上の森コースを下る。ミツバツツジの保護区を経て、さらに進むと、水が流れ、やや開けた場所にある「御湯立場跡」に。昔の修験の地だが、今は一帯にマムシグサが群生していた。花穂が1本だったり、2本だったりのフタリシズカに出合いながら、下山口に出た。
待っていてもらったバスに乗り、駒ケ根高原の「こまくさの湯」で汗を流し、17時半には長野に戻った。
(2017年6月10日号掲載)
=写真=稜線付近の残雪が輝く中央アルプス南部