梅雨の晴れ間となった6月最後の土曜日に、山仲間たちと山ノ内町の志賀山(2036メートル)に登った。志賀高原の中央に位置するこの山は、急しゅんな岩山のため、スキー場開発から取り残されてきた。針葉樹の原生林が茂る自然豊かな亜高山だ。
7時に長野市内を出発。8時半過ぎに登山口の硯川からゲレンデを登る。鉢山を望む前山湿原にはワタスゲが群生し、白い綿毛が風になびいていた。
整備された遊歩道を進むと、間もなく浮き島が点在する渋池に。水面に映る横手山の姿が美しい。
しばらく先の四十八池との分岐を左に折れ、志賀山に向かう。気持ちのよい木道歩きが終わると、大きな岩がゴロゴロしている急な上りに入る=写真上。
あえぎながら登る脇で、紅色のムラサキヤシオツツジや真っ白なオオカメノキの花が目を楽しませてくれる。足元には星形の小さな花を付けたミツバオウレンやピンク色のコイワカガミも。
山頂手前の右下には、小さな火口湖「お釜池」が見える。登り詰めた頂上には方位盤やベンチがあるものの、木々が茂り眺望はいまひとつ。少し先に三角点があり、こちらが本当の山頂のようだ。
急な下りの後、上り返して裏志賀山(2037メートル)へ向かう。途中、右下に「鬼の相撲取り場」という奇妙な名の池や「志賀の小池」が現れる。これらの池は多量の雪解け水が低温によって蒸発を抑えられ、一年中枯れない水量を保っているという。
稜線上の分岐から、わずか入ると、裏志賀山の山頂だ。志賀山神社の石の祠がある。その先の展望地から、コバルトブルーの大沼池を見下ろす。緑の樹林に囲まれ、青く輝くたたずまいは「神秘の池」の名にふさわしい。
裏志賀山から分岐に戻る途中の眺めも素晴らしい。眼下に見えるダケカンバの若葉などが織りなす緑のグラデーションは、東山魁夷画伯の日本画のようだ。
右下には、尾瀬ケ原のミニ版のような四十八池が見渡せる。大小60もの池塘が点在する高層湿原の中央に木道が延びる。

急な斜面を下り、四十八池の木製テラスの上で昼食。木道の先に、ミズバショウの群生が名残の白い苞を付けていた。
帰路は大沼池を回って清水口へ。大沼池の岸辺で休んだ後、一般車通行禁止の長い林道を歩く。途中には「落石注意」の看板が幾つも。見上げると、太い根が大岩を抱きかかえてそびえる巨木があり、周囲にピンクのシャクナゲが咲いていた。
(横前公行)
(2017年7月8日掲載)
写真下:裏志賀山から見下ろす大沼池