115慢性閉塞性肺疾患 ~患者数は増加傾向 最大の要因は喫煙

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 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、たばこの煙などの有害物質を長期間吸入することで生じる肺の病気です。

 肺胞や細い気管支が障害され、肺が過剰に膨らんで正常な肺を圧迫したり、気管支が狭くなることで息をうまく吐き出すことができなくなり、呼吸困難を生じます。勢いよく息を吐き出すことができない「気流閉塞」がこの病気の最大の特徴です。

 患者数は増加傾向で、2020年までに世界の死亡原因の3位になると推測されています。日本では40歳以上の8・6%、約530万人が罹患しているという調査結果が出ています。しかし、治療を受けているのは26万人のみで、医療機関を受診していない人が非常に多いことが分かっています。

進行性の全身疾患
 主な症状は、慢性のせき、たんと、体を動かした時の息切れです。ゆっくり進行するため、早期には病気に気付きにくく、進行するのに伴って息切れが強くなり、不自由な生活を強いられます。長期の喫煙歴がある中年から高齢者に発症し、栄養障害、筋力低下、胃・十二指腸潰瘍、抑うつ、糖尿病、睡眠障害、貧血などとも関連する全身疾患であることが分かってきました。

 診断は、「スパイロメトリー」という呼吸機能検査で、「1秒率(勢いよく息を吐き出せるかの指標)」が低下していることが決め手となります。ほかに、胸部エックス線や心電図の検査を行い、同じ症状を示すほかの疾患でないことを確かめますが、ぜんそくはCOPDと合併することも多く、同じ気流閉塞の症状を示すため鑑別が難しいケースがあります。

肺は元に戻らず
 喫煙は、COPDの発症と進行に関わっています。ですから治療は、まず禁煙することです。また、インフルエンザや肺炎予防のワクチンは、COPDの急性悪化を予防する効果があるため勧められます。

 薬での治療は、気管支拡張薬の吸入が中心です。症状が軽くなり、生活の質や運動能力の向上に役立ちます。

 呼吸法やたんの出し方の訓練、呼吸法トレーニングなどのリハビリテーション、栄養管理なども行います。病気が進行して呼吸困難が強くなった場合には、酸素療法を行います。

 COPDは進行性の病気で、一度障害された肺は元には戻りません。発症・進行の最大の要因は喫煙ですので、将来、呼吸困難に悩まされないためには、いかに早く禁煙するかが重要です。喫煙歴がある人で、長引くせきやたん、息切れに気付いたら、医療機関で肺機能検査を受けましょう。

吉池 文明=内科部長・呼吸器内科副部長=専門は呼吸器
 
知っておきたい医療の知識