
さまざまな動物がすみ、植物が育つ信州。希少な種類や、絶滅が心配されたり、増え続けたりしている生き物は少なくありません。保護の動きも盛んです。写真記者の増田今雄さんが、北信地方の現場に足を運び、季節ごとに紹介します。
県版レッドリストで絶滅危惧1B類にランクされる本州中部亜種のチョウ、ゴマシジミ。かつては県内各地で見られたが、環境の変化や乱獲で激減。現在、生息地は北信と中信地方に限られる。そんなゴマシジミを保護、回復させようという活動が広がっている。
北信の生息地は善光寺盆地の標高800メートルほどの里山の開けた場所。毎年、草刈りが行われ、幼虫が食べるワレモコウが辛うじて残されてきたこの場所だけが生息地だ。2005年あたりから徐々に数が減り、14年に確認できたのは数匹になった。
保護活動は、危機感を持ったチョウの研究者が、県や市を通じて土地管理者にワレモコウの維持を訴えたことが始まり。除草時期を変えたり、群生地に看板を立てたり、採集を防ぐパトロールなどが行われ、ゴマシジミの個体は維持されてきた。
今季は、これまでの研究者や土地管理者に地元の住民自治協議会などが加わり、活動している。地元の中学校美術部に絵を描いてもらい、「がんばれ!ゴマシジミ」の紙芝居を作って小学校に21日に贈る。ゴマシジミの説明や採集禁止の新しい看板を設け、立ち入り禁止のロープも張った。地元住民全体で「希少な命」を見守る意気込みが伝わってくる。
当初から観察、保護活動に携わる日本鱗翅学会評議員の田下昌志さん(55)=長野市=は「今季は最大で14匹が確認でき、増える傾向だ」と、期待を寄せる。
写真=雨の後、羽を広げるゴマシジミの雄=8月22日撮影
【ますだ・いまお】 長野市。1949年、松本市生まれ。信濃毎日新聞社編集局写真部長、編集委員などを務めた。1985年、写真企画「新しなの動植物記」で日本新聞協会賞を受賞