
天候不順の合間を見て8月末の月曜日に、美ケ原高原南東端の茶臼山(2006メートル)に登った。その前にもカルチャースクール「里山講座」の下見に来たが、一面のガスで諦め再挑戦となった。
講師の野崎公夫さん(75)と2人で、7時に長野市内を出発。上田市武石(たけし)からビーナスラインに入り、登山口の扉峠へ向かう。途中、山腹にガスが湧いていたが、美ケ原の台上に出ると思った以上の好天になった。
扉峠にある廃業したレストランの駐車場に車を置き、9時20分に歩き始める。平日でもあり、誰も登る人はいないだろうと思っていたが、ドイツ人の夫と日本人の妻に男児、女児の4人家族が先を歩いていた。
追い越す際に言葉を交わすと、一家は茨城から来たと言い、夫と男児は前日、八ケ岳の赤岳に登ったという。夫のバカンスで信州の山歩きを楽しんでいるようだ。
きつい傾斜のジグザグ道を20分ほど登ると、丘状の尾根に出た。南東方向には、霧ケ峰や八ケ岳。西側には、手前の山々の向こうに北アルプスの山並みが連なる。目を凝らすと、槍や穂高も見える。
ここで一休みし、目の前の茶臼山に向かって、なだらかな稜線上を進む。軟らかな土の道には芝まで生えていて快適だ=写真下。「崩落注意」の看板が2カ所にあり、ロープが張られていたが、危険を感じるほどではない。
コースの中ほどからコメツガの樹林帯に入る。途端に木の根や石がゴロゴロしている道に変わり歩きにくいが、林を抜けると再び快適な道に。笹原と樹林の境目を登って行く。所々に小ぶりなハクサンフウロが咲いていた。
登り始めて1時間半で頂上へ。裸地状の山頂は南東側が大きく開け、広角の眺望が広がる。あいにく八ケ岳は雲の中だったが、北側へ長い裾を引いているのがよく見えた。
5年ほど前に来たときは、浅間山や奥秩父の山々も見渡せ、南に諏訪湖も見下ろせた。
山頂で昼食後、2人は別行動に。私は来た道を下って扉峠へ。野崎さんは台上に出て、塩くれ場を経て百曲がりを下り、三城いこいの広場へ向かう。扉峠から私が車を運転し、三城いこいの広場で待つ段取りだ。
誰にも会わない山道を一人で下るため、両方のストックに熊鈴を付け、音を大きくして進む。目の前に赤とんぼが飛び交い、道端のススキも穂を出し、秋の気配の深まりを感じる。
無事に扉峠に到着。車を三城いこいの広場に回すと、待つほどもなく野崎さんが下って来た。百曲がりの下りは長いが、台上は広々としていて気分爽快だったという。
合流した後は松本市内へ下り、美ケ原温泉の白糸の湯で汗を流して、国道19号で長野へ戻った。
(横前公行)
(2017年9月9日掲載)
写真下:尾根上から望む北アルプス