
黄金色の稲田が広がる長野市南部の神社。「チゴハヤブサ」を撮影中、三脚に据えたカメラの望遠レンズの上に小さな動くものが。よく見ると、逆三角形の顔をこちらに向け威嚇している。
体長は3~4センチ。前脚は攻撃態勢、頭部から胸に続くおなかを、ぐいっと天高く持ち上げている。幅が普通のカマキリに比べて広い。かつて取材したことがある「ハラビロカマキリ」の幼虫と、すぐに分かった。
野鳥撮影を中断し、コンパクトデジカメのマクロモードでぐっと迫る。すると、獲物と間違えたのか、忍者のようにすいすい近寄ってくる。何枚かシャッターを切るうちに、とうとうカメラから私の手、腕の方まで侵入してきた。
もとは暖地性のカマキリだが、温暖化の影響で県南から北上。北信では2007年、長野市内で日本鱗翅学会評議員田下昌志さん(55)が最初に確認した。私も13年に、南県町のビルのガラスに張り付いている幼虫を撮影した。最近、田下さんは同市の犀川で成虫を、自宅庭で幼虫を確認しており、「越冬して勢力を拡大している」という見方だ。
成虫は体長5~7センチほどで、よく似た外来種の「ムネアカハラビロカマキリ」がここ数年、勢力を拡大、天竜川に沿って北上しているという。
昨年、県環境保全研究所の須賀丈主任研究員(52)=昆虫生態学=に市内の住民から情報が入った。「3年ほど前から普通にハラビロカマキリを見るようになったが、実は『ムネアカハラビロカマキリ』だった」という内容だった。今年も3匹を確認している。
愛知県豊田市では、ムネアカが侵入し、ハラビロが激減したという報告例がある。
写真=望遠レンズのフードに突然現れたハラビロカマキリの幼虫=長野市南部の神社で8月19日撮影