「むずむず脚症候群」は、脚の内部から虫がはうような独特の不快感が生じる慢性疾患です。脚を動かしたいという衝動に駆られ、実際に脚を動かしたり、マッサージなどの刺激を加えたりすると、改善する特徴があります。
安静にしている時、特に夜寝ている時に症状が現れやすく、不眠の原因にもなります。
日本人の有病率は1~4%とされていますが、症状を自覚していながら病気だと思っていない、あるいは単なる不眠症ととらえていたという人もいますので、実際はもう少し多いかもしれません。
「痛い」「かゆい」人も
「むずむず」という病名がついていますが、その感覚は患者さんによってさまざまです。「痛い」と言う人もいれば、「かゆい」と表現する人もいます。ただ▽「脚を動かしたい」という強い衝動に駆られる▽安静にしていると症状が強くなり、脚を動かすと、症状が軽減する▽夕方から夜間にひどくなる―が共通の特徴で、これらが診断の要素になります。
原因はまだ解明されていない点が多いのですが、中枢神経系(脳、脊髄)での「ドーパミン」という神経伝達物質の活性低下が一因ではないかと考えられています。同様に、ドーパミンが欠乏するパーキンソン病、末梢神経の病気、腰椎症など脊椎の病気、鉄分の不足、妊娠に伴って発症することもあります。ただ、ほかに特別な病気がなくても発症することがあります。
悪化で全身に症状も
治療は、原因となる病気があれば、その病気の治療を優先します。特に、血液検査の結果、鉄が欠乏していれば、鉄剤を内服することで症状が緩和します。
生活習慣の見直しだけで改善することもあります。喫煙、アルコールやカフェインなどの摂取は、症状悪化の因子であることが分かっていますので、これらを控えるだけでも改善が期待できます。夜間に症状が強くなる傾向がありますので、就寝前にこれらを控えるのは、より有効です。就寝前の脚マッサージや軽い脚の運動でも症状が軽くなることがあります。
中程度以上の症状がある場合は、薬で治療します。ドーパミン作動薬や「ガバペンチン」という有効性の高い薬を使います。
むずむず脚症候群は、悪化すると脚だけでなく全身に症状が及んで日常生活に影響が出たり、不眠のために仕事に支障が出たりもする病気です。心当たりがある人は、かかりつけの医師に相談してください。
(2017年10月7日掲載)
田澤 浩一:神経内科副部長・脳卒中センター科長=専門は神経内科