
10月中旬の秋晴れの日を選んで、諏訪市と伊那市境の守屋山(1650メートル)に登った。伊那山脈の北端に当たり、諏訪大社上社の神体山でもある。始まったばかりの紅葉と素晴らしい眺望を楽しんだ。
山仲間と2人で、長野市内を7時に出発。長野道から中央道諏訪インターを出て、国道152号を杖突峠へ。峠から1キロほど下った立石ルートの登山口から登り始める。
「守屋新道」ともいうこのルートは、地元高遠町片倉の守屋源一さんが独力で切り開いた登山道だ。所々に奇岩怪石が現れ、変化に富んでいる。
赤松林を進むと、まず「亀石」の看板。見上げると、甲羅から頭を出したような、こけむした巨石が。ルート名となった「立石」は「坊主岩」とも呼ばれ、縦長のずんぐりした岩が垂直にそそり立っている。
その先に、岩の割れ目が十字に見える「十文字岩」。さらに「平成のビーナス」の看板も。辺りを見回すと、ケヤキの幹に女性の胸を思わせる二つ並んだこぶがある。確かに、国宝土偶「縄文のビーナス」に似ている。
ほかにも、二つ寄り添った「夫婦岩」、えぐれた岩の中に鬼が住んでいたと伝わる「鬼ケ城」などが次々に現れる。「百畳敷」と名付けた岩盤上からは、南アルプス仙丈ケ岳が間近に見える。
カラマツの幹に絡まった真っ赤なツタもみじや、ミズナラの黄葉を楽しみながら登る。所々に青紫のトリカブトの花が咲いている。
休憩地点の「前岳(休)(やすみ)(処)(どころ)」で一息入れる。「五十(曲)(まがり)試練坂」と名付けられたジグザグの急登が終わると、二つある山頂部の東峰へ。
ここからの眺めはさえぎるものがなく、全方位だ=写真下。南アルプスから秩父山系、眼前の八ケ岳の西側には草もみじの霧ケ峰や美ケ原。北アルプスは雲がかかっていたが、中央アルプスはよく見えた。富士山だけは入笠山に隠れて見えない。
眺望を楽しんだ後、20分ほど先の西峰に向かう。東峰の直下には、麓の守屋神社の奥宮がある。石の祠が鉄柵で囲まれ、コンクリートで固定されている。雨乞いの際に転がされたのを防ぐためという。
西峰は小広い草地になっている。眼下に諏訪湖を見下ろし、人家の密集した諏訪盆地を一望しながら昼食を取る。再び東峰に戻り、帰路は杖突峠コースを下る。1時間足らずでキャンプ場がある広場へ着いた。
ここから峠までの登山道が分からず、最後まで林道を下るはめに。アスファルトの上を登山靴で歩くのは気が重い。国道152号に出て、さらに1キロほど下って立石コースの駐車場に行き、そこから車で長野へ戻った。
(2017年10月28日掲載)
(上)東峰から見下ろす諏訪湖