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2017年秋07 オニシオガマ ~県北部の多雪地帯に特有

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 まだ命をつないでいるだろうか。長野県最北の栄村、新潟県境の信越トレイル沿いにある標高1000メートル余のため池近くの沢に、9年ぶりに足を運んだ。オニシオガマを探すためだ。

 沢筋にはガクアジサイやミズバショウ、アザミのほか、背丈ほどもある雑草は相変わらずだ。右側から小規模の山崩れか、土砂が2カ所で押し出している。土砂の下になってしまったか...。堆積した高台から探すと、花穂の下方から咲き始めたピンク色の花があった。

 前より位置が下の方にずれた感じだ。かつてにぎやかだった群落の密生感はなく、独立した株が広く点在している。丈も低く細いのが目立つ。それでも1本1本数えると、約100本。紅葉が始まったばかりの沢筋で異彩を放っていた。

 県内では小谷村の栂池自然園一帯など北部地域に生育。石川県から秋田県にかけて日本海側の多雪地帯の山地から亜高山帯の湿地や湿原に特有で、県の絶滅危惧種指定だ。

 高さは30センチから1メートルほどと高く、高山に咲く同じゴマノハグサ科のミヤマシオガマやタカネシオガマなどの仲間に比べ、格段に大きい。これが名前の由来というが、きれいな花だけにかわいそうな気がする。

 ここのオニシオガマが初めて世に出たのは1932年。下水内郡植物誌(下水内教育会発行)に記録が残る。その後、53年の調査では、「ため池になる前、湿原の背に沿って生えていた」と飯山市の植物研究家、高橋勧さん(88)。ずぶぬれになりながら記録係を務めたが、はっきりと覚えているという。

 記録に残るだけでも80年余。久しぶりに出会えた大きなピンク色の花に元気をもらった。

花穂の下から順に咲いていくオニシオガマ。大形の花は見応えがある=栄村のため池で(9月20日撮影)
(2017年10月21日掲載)
 
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