
すっくと伸びた高さは50センチから1メートルと長い。イネ科で稲のように株となり、茎は数本から大きい株で数十本にもなる。秋の深まりとともに茶色になった茎上部からは、種の白い穂綿が顔をのぞかせる。
和名の「メリケン」はアメリカを指し、原産地は北アメリカ。日本では1940(昭和15)年ころ、愛知県内で初めて見つかったとされる。県内では、県植物誌編さん委員長だった故奥原弘人さんが、80年代後半に旧山口村(現岐阜県中津川市)や木曽谷、伊那谷など南信で確認している。
このころ、松本市の野生生物の観察を続ける逸見泰明さん(79)は、近くの梓川河川敷で小群落を見つけ、奥原さんと共に調べて記録。その後、2005~06年にかけて南木曽町や泰阜村、梓橋上流で群落を再発見している。
逸見さんからの情報で、かつて取材した松本市のアルプス公園に、10年ぶりに足を運んだ。ほぼ同じ場所で確認でき、穂綿を撮影した株はそのままだ。しかし、20株ほどだった株は70~80株と、3~4倍に増えていた。さらに、当時確認した千曲市の更埴インターや松本インターでも健在だった。
手入れされた公園や芝生の中、新たに作られた植え込みなど開発地に侵入、増えている感じだ。今回、新たに長野駅東口から北へ進んだ道路の中央分離帯、北長野駅近くの私有地の駐車場のり面、長野インターなどで発見できた。
国の要注意外来生物指定種。県環境保全研究所の尾関雅章主任研究員(植物生態学)は「県植物誌の刊行後、高森町や大鹿村で採集された標本が当所に収められている。やや県内全域に広がりつつあるように感じられる」。爆発的ではないが、じわじわと拡大しているようだ。
(2017年11月4日掲載)
写真:茎上部から種の穂綿をのぞかせるメリケンカルカヤ。株は100を超す=長野駅東口の市道中央分離帯で10月27日撮影